PERIODICAL>L&G>DOOBIE BROTHERS
『車窓を奏でるメロディー』(6)

illustration by Picaro Taro Manabe
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『逃亡者の旅路に寄りそう長い長い列車』

曲:      『ロング・トレイン・ラニン』
           (Long Train Runnin')
歌:      ドゥービー・ブラザース
           Doobie Brothers
年:      1973年

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『逃亡者の旅路に寄りそう長い長い列車』


   「リチャード・キンブル。職業医師。正しかるべき正義もときと
してめしいることがある...」という矢島正明氏の名ナレーショ
ンで始まる60年代の人気テレビ・シリーズ『逃亡者』。主人公は
無実の罪で死刑を宣告され、逃亡生活を続ける医師キンブル。執拗
なジェラード警部の追跡をかわしながら、真犯人を捜し求める、と
いう物語だ。デイヴィッド・ジャンセン演じるキンブルは、全米を
逃げ回る。そして、そのとき彼がしばしば利用したのが、長い長い
貨物列車だ。

   1日に1本か2本しか行き来しないであろう線路をゆっくり走る
貨物列車の中から、扉の開いた空の車両を見つけ、飛び乗り、次の
土地へ果てしない絶望の旅を続ける。

   ロング・トレインというと、僕はどうしても、この『逃亡者』の
キンブルが乗るような貨物列車を思い浮べてしまう。アメリカのロ
ング・トレインは、本当に長い。

   「ロング・トレイン・ラニン」という曲を歌ったのは、69年に
カリフォルニアのサンホセで活動を始め、その後世界的人気を獲得
するドゥービー・ブラザースだ。メンバーのトム・ジョンストンが
この曲を書いた。彼は、ジェームス・ブラウンや、古いブルースな
どの黒人音楽が大好きで、そうしたものばかり聴いていた。「ロン
グ・トレイン・ラニン」にソウルを感じるとすれば、トムのそうし
たソウルへの熱き思いが込められているからだろう。

   アップ・テンポのこの曲はのりが抜群で、70年代から、ディス
コティックでも人気がある曲だ。

   六本木のクラブ(平板のイントネーションで)「SSB」、ソウ
ル・バー「ティアーズ」、あるいは白金の「ダンステリア」といっ
た店では、70年代から80年代初期のダンス・ヒット曲がひんぱ
んにかかる。そうした音楽は「ダンス・クラシック」(略してダン
クラ)と呼ばれ、当時リアルタイムで楽しんだ30代後半から40
代の人々だけでなく、20代の若い人たちの間でも話題となってい
る。

   何百曲とあるダンクラの中でも、ドゥービーズの「ロング・トレ
イン・ラニン」は、飛び切りの人気曲だ。それまでダンス・フロア
が閑散としていても、この曲のイントロがかかるや否や、そのフロ
アは立錐の余地もないほど人であふれかえることになる。

   グループ名の「ドゥービー」とは、60年代のカリフォルニアの
スラングで、マリファナのこと。意味としては、「マリファナ兄弟
」ということになる。当時のヒッピー/フラワー・ムーヴメントの
申し子的な名前である。アメリカの若者の間で爆発的人気を獲得し
たのもうなずける。

   『逃亡者』のキンブルは数年間の逃亡生活の末、69年、無事に
真犯人を見つけ、ロング・トレインに乗る生活に終止符を打った。
キンブルの逃亡生活が終わった同じ年に、ドゥービーズの伝説が始
まった。

(2002年11月26日アップ)
    
1999年9月号L&G誌に掲載
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