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『車窓を奏でるメロディー』(4)

illustration by Picaro Taro Manabe
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『四半世紀の思い出が乗った「愛の列車」』

曲:      『ラヴ・トレイン』
           (Love Train)
歌:      オージェイズ(O'Jays)
年:      1973年


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『四半世紀の思い出が乗った「愛の列車」』

   1973年春、六本木の今はなき伝説的ディスコ  「エンバシー
」。横須賀などの米軍基地からやって来るブラザーたちがたむろす
る一見危ない空間で、「ラヴ・トレイン」がかかると、彼らは我を
忘れてフロアで踊り狂った。

   フィラデルフィア・ソウルの軽快なリズムで「世界中のみんな、
一緒に乗って愛の列車を走らせよう」と歌うのはオージェイズ。ロ
シアや中国の同胞よ、アフリカやエジプトの兄弟たちよ、と呼びか
ける、一種の「世界はひとつソング」である。

   そうしたメッセージを持った作品は、いくつもある。ファンカデ
リックというグループの「ワン・ネイション・アンダー・ザ・グル
ーヴ」、あるいはジャネット・ジャクソンの「リズム・ネイション
」などもそんな例だ。ポジティヴな内容を持った歌で、言ってみれ
ばいつの時代にも受ける。

   「ラヴ・トレイン」は、結婚式でかかることもあれば、教会でゴ
スペルに混ざって歌われることもある。

   96年2月、シカゴでサウンズ・オブ・ブラックネスというグル
ープのライヴを見た。中西部を中心に歌ってきた元々は大所帯のゴ
スペル・コーラス・グループで、今では、ゴスペルだけでなく、し
っかりしたメッセージを持った聴きやすいソウル、R&Bのヒット
も歌う。そんな彼らが、ステージでこの「ラヴ・トレイン」を歌い
だして、僕は度胆を抜かれた。

   それまで、「エンバシー」でブラザーたちが熱狂的に踊っていた
シーンが僕の脳裏に焼き付いていた「ラヴ・トレイン」を、ゴスペ
ル・グループが大合唱するのを聴いて、その真摯なメッセージとこ
の曲の熱い魅力を改めて感じ取ったのだ。

   ウーピー・ゴールドバーグ主演の『天使にラヴ・ソングを』では
「アイ・ウィル・ファロー・ヒム」というポップ・ソングが、ヒム
を神と捉えて歌われ、見事なゴスペルになっていた。同じように「
ラヴ・トレイン」も、誰もが一度聴いたら口ずさめるようなシンプ
ルなポップ・ソングだが、普遍的な愛を歌うことによって、神のメ
ッセージとしても捉えられたのだ。

   1958年にエディー・リヴァートら高校の同級生によってオハ
イオ州カントンで結成されたオージェイズは、既にグループ結成4
0周年を超えている。だが、結成以来エディーらとともに歌ってき
た親友ウィリアム・パウエルは、77年ガンで不帰の人となった。
また、エディーの息子、ジェラルド・リヴァートは、兄弟従兄弟で
グループ、リヴァートを結成し、父親と同じ道を歩んでいる。

   オージェイズのライヴで必ず歌われる「ラヴ・トレイン」は、エ
ディーの気持ちの中では、エディーという始発駅から出発し、ウィ
リアム駅を経由し、息子たちのリヴァート駅に向かって爽快に快走
している列車なのかもしれない。その列車には、四半世紀に及ぶ彼
の思い出が乗っているのだ。

(2002年11月12日アップ)
    
1999年7月号L&G誌に掲載
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