ENT>MUSIC>LIVE>THIELEMANS, TOOTS, WITH CASTRO-NEVES, OSCAR
トゥーツ・シールマンス・ライヴ『熱く美しき138歳のハグ』
トゥーツ・シールマンス・ライヴ『熱く美しき138歳のハグ』

『熱く美しき138歳のハグ』

【2001年4月10日・東京ブルーノート・セカンドステージ】

______________________________


   それまでステージの主人公は確かに、トゥーツ・シールマンスだ
った。そこに今回のスペシャル・ゲストでギタリストのオスカー・
カストロ・ネビスが登場した。するとどうだろう。トゥーツのハー
モニカに輝きが増したではないか。

   自分を理解してくれる人間、自分を尊敬してくれる人間がそこに
いれば、その自分は気持ちがよくなり、普段とは違うアドレナリン
がでてくる。

   オスカーがステージ真ん中に座り、トゥーツが一歩ひいた形で、
ふたりのデュエットが始まった。トゥーツは、オスカーのことを「
マエストロ(巨匠)」と呼ぶ。「マエストロ」の作品「ドロフィン
」を演奏し終えたふたりは、それぞれ指で相手のことを指差した。
その人差し指と人差し指の間には、ETと子供の間にあった愛の光
線が走っているかのようだった。

   「マエストロ」がステージに来てから、ふたりの間に見事な化学
反応が起こった瞬間だった。このとき主人公は、ふたりになってい
た。

   トゥーツのハーモニカを聴いていると、実に良質のもの、品格と
いったものを感じる。彼のおおらかで、誠実な人柄がそのままハー
モニカの音色に表れている。

   名は体を表すという。ミュージシャンの場合、音色(ねいろ)は
体を表す。ミュージシャンの性格、パーソナリティーが音楽と音色
に如実に表れるのである。

   しかもトゥーツの音楽からは、とてもイメージが広がる。時に
海、時に太陽、時に山々の木々・・・。

   トゥーツのハーモニカはこんなことを言っているようだ。「その
日に嫌なことがあったら、私のハーモニカを聴きにいらっしゃい。
そうすれば、すべての嫌なことを忘れられるでしょう」

   彼のハーモニカの音色からは、トゥーツの懐、心の広さが感じら
れた。心が休まる、癒し効果も満点だ。

   枯れた響き、熟年の味わい。トゥーツは、世界一小さな楽器を、
世界一大きなハートで吹き、世界一高い名声を獲得しているのであ
る。こんな世界一づくめを、これほど小さな会場で間近に見られる
なんて、何と幸福なことか。

   ハーモニカとギターでデュエットし終え、ステージ中央でトゥー
ツとオスカーがハグ(抱擁)をした。それは、お互いを尊敬しあい
、相手に敬意を表した、ふたりあわせて(トゥーツ78歳、オスカ
ー60歳)138歳の熱く美しいハグだった。

吉岡正晴
2001年4月10日、セカンドステージ
ブルーノート

(2003年2月20日アップ)
    
MASAHARU YOSHIOKA
|Return|