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テイク6・ライヴ『鎧(よろい)をまとい始めたネイキッド・メディア』
テイク6・ライヴ
『鎧(よろい)をまとい始めたネイキッド・メディア』
【2002年5月15日水曜・セカンド・ステージ・東京ブルーノ
ート】

  アカペラ・グループ、テイク6の2002年5月の来日は、89
年の初来日以来10度目。ブルーノート東京は、月曜から土曜まで
毎日2回公演すべてに満員御礼がでた。初来日から今回のライヴま
で、テイク6のライヴはどのように進化しているのか。


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  ネイキッド・メディア。


  メンバーのクロウド・マクナイトは、かつてアカペラを「ネイキ
ッド・メディア(裸のメディア)」と表現しこう説明してくれた。

  「アカペラで人々の注意を引くにはとてもクリエイティヴになら
なければならない。声自体は、実に多くのことができる。これは正
に自然の楽器だ。そこ(アカペラ)では、他に頼るものなんて何も
ない。すべてのコーラスを聴き、自分がどこにフィットするかを知
らなければならないんだ。一つでも音が違ったらすべてが狂ってし
まうのだ」

  「そしてそれを人々はあまり認識していない。過去何年も僕は多
くの優れたヴォーカリストを見てきた。しかし、すべてがあらゆる
人に聞かれるわけではない。つまり、素晴らしいヴォーカリストが
いたとしても、その彼が6パート・ハーモニーのサード・テナーを
できるとは限らない、ということだ。これは大変な仕事なんだ」

  彼らを初めて見たのは、89年5月、ロスアンジェルス。僕はす
でにデビュー・アルバム(88年作品)を聴き込み、そのライナー
ノーツも書いていた。音楽業界誌BREのコンヴェンションの席上
だった。その時の衝撃は今でも忘れない。特にこれと言ったアナウ
ンスもなく、いきなりゾロゾロと6人が狭いステージに出てきて、
一斉にハーモニーを作りだしたのだ。

  そして、その半年後(89年11月)初来日。東京・五反田の簡
易保険ホールで見た。その時は、広いステージにピアノがぽつりと
一台あっただけ。すべての勝負は、彼らの声だった。その時の素晴
らしさもすぐによみがえる。

  それは、一糸まとわぬ美しい肉体が、見事な芸術作品に昇華する
のと同じように、ネイキッド(裸)の芸術だった。

  その後何度も来日している彼らだが、しばらく前のライヴあたり
から少しずつ楽器をいじりだすようになっている。前回も、キーボ
ードとギター、それにバックにドラマーをつけていて、初期の頃の
ライヴと比べるとかなり楽器依存度が高くなっていたが、今回はな
んと、それに加えベース、さらにキーボードは計3台、サックス、
トロンボーンまでがステージに所狭しと置かれた。
  全曲にこのバンド演奏がつくわけではないが、曲によってはかな
りの楽器の音がでてくる。これではまるで「セルフ・コンテインド
・グループ」(自給自足グループ=自分たちで楽器演奏もし、歌も
歌い、曲作りもするグループ。70年代に一世をふうびした)さな
がらだ。

  初来日の時は、すべて6人のハーモニーだけ。アカペラ、人間の
声の無限の可能性をつとに感じた。しかし、一度(ひとたび)アカ
ペラ・グループが、楽器を使い始めると、どんどん楽な方、楽な方
に進んでいく。つまりハーモニーの構築が楽な方になっていくので
ある。そういう意味でいくと、楽器曲は、極端な話、ボーイズ・ト
ゥ・メンあたりにでも任せておけばいいのではないかと思ってしま
う。楽器とは、彼らにとっては文字どおり「楽(らく)な器(うつ
わ)」になってしまうかのようだ。

  個人的な感想を言えば、楽器演奏があると、楽器の音の量(音質
の多さも音量も)が圧倒的で、聴く側も本質的な声そのもの、ヴォ
ーカル・ハーモニーへの集中力が欠如する。おそらく彼ら自身も、
楽器演奏があると、緻密なコーラス・ハーモニーの構築に対する集
中が欠けることになるのだろう。現実問題として「歌に専念してく
れ」という気持ちがライヴを見ていて何度となくでてきてしまうの
だ。

  とはいうものの、やはり、コーラスの重厚さは、相変わらず素晴
らしい。ほんの一秒だけ彼らが声を出すだけで、「テイク6だ!」
とわかる。まさに、ワン・アンド・オンリーである。これにはまっ
たく文句ない。


  ボディーソニック。          


  テイク6の高音から低音までを含む重厚なハーモニーを耳にする
と、あたかも体にずしりと直接響くボディーソニックを体感してい
るかのようだ。  

  今回のショウは、前回来日時(2001年11月)のショウと基
本的にはほぼ同じ選曲。すでにその時点で録音が終わっていた新作
『ビューティフル・ワールド』(2002年5月世界発売)からの
作品を中心に約1時間余、「テイキン・イット・トゥ・ザ・ストリ
ート」、「ウエイド・イン・ザ・ウォーター」、「ピープル・ゲッ
ト・レディー」、「ドント・ギヴ・アップ」、「グランドマズ・ハ
ンズ」、「ビューティフル・ワールド」などを楽器演奏を含めなが
ら披露した。

  観客を楽しませる術を熟知している彼らは、ユーモアたっぷりに
ステージを進める。時に笑わせ、時にしっとりと聴かせ、時に観客
を立ち上がらせるほど盛り上げ、ショウは進む。      

  途中の「テイク6・メドレー」の部分は、これまでのテイク6の
作品の中でも、初期の作品中心で、やはり圧巻だった。

  ネイキッド・メディアに、彼らは楽器という鎧(よろい)を着せ
始めている。鎧をまとうことが進化なのか。この鎧はなんのために
必要なのだろうか。美しい肉体は、ネイキッド(裸)そのものだけ
で充分美しさが伝わるのだが。

【2002年5月15日・セカンドステージ。ブルーノート東京】


                      @@@@@@
    
MASAHARU YOSHIOKA
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