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ドロシー・ムーア・ライヴ 『ホーム・ゴーイングの涙』
ドロシー・ムーア・ライヴ  『ホーム・ゴーイングの涙』

ドロシー・ムーア・ライヴ  
『ホーム・ゴーイングの涙』
【2001年7月27日金曜・渋谷オンエアー】


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  黙祷。

  ステージを降りてきてドロシーはマイクを持って淡々と話しはじ
めた。「神戸で起こった事故で多くの子供たちが亡くなったそうで
すね。そこで亡くなった人たちのために黙祷をささげます」

  しばし、うつむいて黙祷を捧げたドロシー。

  「どうもありがとう。その(歩道)橋で亡くなった子供たちのた
めに、伝統的なゴスペルの曲をアカペラで歌います。『ホーム・ゴ
ーイング』という曲です」

  こうして、彼女はその「ホーム・ゴーイング」という曲を歌い始
めた。首に巻いたタオルが、普通の気のいいおばちゃんが部屋を掃
除しているかのようだ。

  曲が始まってまもなく、観客席から曲にあわせた拍子が巻き起こ
った。

  汗をぬぐっているのかと思ったら、彼女は涙をぬぐっていた。す
ると、彼女の声がつまり、歌が止まってしまった。だが、客席から
の手拍子は止まらない。彼女はその手拍子に押されるように、気を
取りなおし、歌を歌い続ける。

  何度もタオルで目をふきつつ歌い終えた。そして、長い、長い拍
手が続いた。

  大きな深呼吸をして一息つくとバンド・メンバーは、あの曲のイ
ントロを演奏し始めた。その瞬間、客席から再び歓声が巻き起こっ
た。「ミスティ・ブルー」だ。

  声が全盛時のときほどはでていなかったかもしれない。その「ホ
ーム・ゴーイング」も、途中途切れ途切れになるし、声もうわずる
ために、完璧なものではなかった。だが、確かに気持ちが、心が、
彼女のソウルが、その「ホーム・ゴーイング」には入っていた。

  首相ではないが、「よく歌った。感動した」と言いたい。

  ドロシーは、ショウが終わったあと、10分もしないうちに、表
にでてきて、ファンのためにサイン会を始めた。CDやファンが持
ってきた昔のLPジャケットに、皆が思い思いにサインを求めた。
それに応じて、彼女はいやな顔ひとつせず、サインを書いていた。

  彼女に話しかけた。「『ホーム・ゴーイング』はとっても感動的
でしたよ」

  彼女は答えた。「私にも孫が2人いるのよ。それを思ったら、と
ても感傷的になってしまって」

  「ホーム・ゴーイング」の涙には、ドロシーの孫を思う気持ちも
入っていたのだ。

【2001年7月27日金曜・渋谷オンエアー】
(吉岡正晴)

(2002年9月25日アップ)
    
MASAHARU YOSHIOKA
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