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ミシェル・カミロ&トマティート・ライヴ『火花のシャワー』
ミシェル・カミロ&トマティート・ライヴ
『火花のシャワー』

ミシェル・カミロ&トマティート・ライヴ
『火花のシャワー』

【2000年10月19日木曜・セカンド・ステージ・東京ブルーノート】

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   火花。

   ふたりは自分の手元も見ずに、おたがいの目を見つめあう。じっ
と見つめあうその姿は、深く愛しあう恋人さながらだ。
   それぞれの手元は目にも止まらぬ速さで動いている。
   ひとりは舞台の中央、もうひとりは左側にいて、それぞれの持ち
場を守っている。
   中央の男はギターを手にしたスペインはアンダルシア地方に生ま
れたトマティート。もうひとりの男は、ドミニカ共和国出身のピア
ニスト、ミシェル・カミロ。
   ピアノのソロになった瞬間、あるいは、ギター・ソロになった瞬
間。ブルーノートの客席は静まり返る。食事をしている人も、グラ
スを片手に持っている人も一瞬、手を止める。ナイフやフォークを
動かす音や食器があたる音が、会場に響き渡らないほうがいい。
   トマティートとミシェル。たったふたりが、それぞれギターとピ
アノという楽器で自分を表現する。そして、ふたりがハーモニーを
奏でるとき、お互いの目と目をあわせ、視線を外すことがほとんど
ない。
   トマティートの目から発射される光線と、ミシェルの目から発射
される光線が、ステージ中央でぶつかりあい見事にスパークする。
そして、そこで飛び散った火花が、観客席にふりそそぐ。観客席に
は、そんな火花のシャワーが何度も何度も舞い降りた。

   目と目は見つめあいながらも、彼らの手元が狂うことは決してな
い。
   プロの職人芸だ。
   目と目をあわせることによって、ふたりは、お互い次にどのよう
なアクションを起こそうとしているのかがすべて手に取るようにわ
かる。
   ときにトマティートがミシェルに語りかけ、ときにミシェルがト
マティートに話しかけ、そして、それぞれが答える。
   目と目をあわせることによって成立する見事な「会話」。
   ミュージシャンたちは、お互いに話しかけているだけではない。
   トマティートは、ギターに語りかけ、ギターの心を尋ね、ギター
のソウルを聴く。
   ミッシェルも、ピアノに語りかけ、ピアノの心を問い、ピアノの
ソウルに耳を傾けているのだ。
   そしてトマティートは、自分のギターに語りかけるのと同時にミ
シェルに、そしてミシェルの分身であるピアノに語りかける。ミシ
ェルも、自分のピアノに語りかけるのと同時に、トマティートに、
そして、トマティートの分身であるギターに語りかけるのである。

   ミュージシャンと楽器、ミュージシャンとミュージシャン。そこ
には見事なコミュニケーションのトライアングルが浮かび上がる。
   生身のミュージシャン同士の間に存在する「ミュージシャンシッ
プ」。これは人間同士の間でしか成立しない。
   トマティートとミシェルは、ライヴの途中ふたりのソロ・パート
を含むアップ・テンポの曲を終えたとき、それぞれが中央に歩み寄
り、おたがいの右手をぶつけ、ハイタッチをした。
   万雷の拍手が観客席から巻き起こる。リアル・ミュージシャンが
リアル・ミュージックを奏でて、賞賛を得た瞬間だった。


【2000年10月19日木曜セカンド・ステージ・東京ブルーノート】

吉岡正晴

(2002年10月11日アップ)

    
MASAHARU YOSHIOKA
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