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メアリー・J・ブライジ・ライヴ『抑圧からの解放』
メアリー・J・ブライジ・ライヴ          
『抑圧からの解放』
【2002年3月13日水曜・東京国際フォーラム、ホールA】


  それまで抑圧されていたアーティストが、その抑圧から解き放た
れ、自分自身の言葉を持った時、その言葉やパフォーマンスには美
しい白い光が輝く。メアリー・J・ブライジの久しぶりのライヴは
、彼女のアーティストしての自立、解放、自由さ、といったものが
計らずも表にでたものになっていた。

  中盤2ブロック目(註、メアリーはこの日、ショウを3つのブロ
ックに分けていた)のトップを飾ったのは、ダニー・ハザウエイの
名曲「サムデイ・ウィル・オール・ビー・フリー」(73年)。ト
ークの部分では、神への感謝、ファンへの感謝を述べたりしていた
彼女が、歌そのものでメッセージを伝えようとする。「我々は、い
つか自由になる」というダニーの約30年前のメッセージは、メア
リーの個人的思いと微妙に交錯するかのようだ。この曲の後「チル
ドレン・オブ・ザ・ゲットー」へと続き、70年代初期の混迷のア
メリカの時代を思わせる。

  曲によってはワンコーラスだけでつなぎ、できるだけ多くの曲を
聴かせようという構成。また、「それまでは、自分自身が好きでは
なかったが、今は自分自身を愛すことができる。神様が何かを言っ
てくれるから」といった語りからもひとつふっきれたメアリーの素
顔が覗く。

  かつてどれだけ音楽的な自由がなかったとしても、今、彼女は完
全に自立し、少なくとも5000人のファンで埋め尽くされたこの
会場は、メアリー、君の支配下にある。この1時間半という時は、
完璧に君の手中にある。君の言いたいこと、メッセージは充分伝わ
るはずだ。

  ファンのために捧げた「ユー・アー・エヴリシング」(スタイリ
スティックスのヒット)はいい選曲だ。これでもう少し歌をはずさ
ずに歌い、踊りがうまくなればさらにスケールアップするにちがい
ない。ファンは既にそこにいるのだから。

【2002年3月13日水曜・東京国際フォーラム、ホールA】
(吉岡正晴)

(毎日新聞2002年3月16日付け・夕刊・楽庫に掲載)
    
MASAHARU YOSHIOKA
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