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レイ・グッドマン&ブラウン『一本のタオルでつながるふたりの絆』
レイ・グッドマン&ブラウン・ライヴ
『一本のタオルでつながるふたりの絆』
【2002年1月13日日曜、六本木スイートベイジル】    


  ソウル・ヴォーカル・グループ、元モーメンツ、現在レイ・グッ
ドマン&ブラウンのショウが2002年1月13日、東京・六本木
スイートベイジルで行なわれた。比較的年齢層が高い観客で満席状
態。登場したのは、アル・グッドマン、ビリー・ブラウン、そして
、ラリー・ウィンフリー。予定されていたケヴィン・オーエンスに
かわって新人のラリーが来日。ラリーは、ケヴィンが参加できない
時に、参加するという。これまでグループのバック・コーラスは担
当していたが、フロントに立つのはここ2か月ほど前から。アンコ
ールでは、発売されたばかりの新作『モーメンツ・ウィズ・フレン
ズ』からの新曲を披露。これが、ミュージシャン仲間でもあるスタ
イリスティックス、ブルー・マジック、デルフォニックスなどのヒ
ット曲をカヴァーしたアルバムで、そこから「ユー・アー・エヴリ
シング」、「ラ・ラ・ミーンズ・アイ・ラヴ・ユー」などを歌い約
1時間40分のショウの幕を閉じた。

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『一本のタオルでつながるふたりの絆』

  バンドが、ヒット曲のサビの部分だけのメドレーを軽く演奏し、
3人がステージに登場。満面の笑みを浮かべるアル・グッドマンの
顔が印象的だ。軽くステップを踏み、3人がターンして背中を見せ
ると、スーツの背中の真ん中があいていた。それを見せて、ちょっ
と笑いをとる。

  ショウ全体を通して、グッドマン、ブラウンのコレオグラフィー
は、まさにヴェテランの余裕の域に達している。30年以上、同じ
ステップを踏み、同じように腕と、腰と、足を動かし続けている彼
らにとって、この曲のこの振りつけなどは、目をつぶってもできる
動きなのだろう。メロディーと歌詞と、コレオグラフィーが一体と
なって、彼らの体に染み付き、熟成して、ステージ上の彼らから発
酵する。

  「スペシャル・レイディー」は、観客の男性に「ユー・マスト・
ビー・ア・スペシャル・レイディー(君は特別な女性に違いない)
」と歌わせ、女性に「アイ・ノウ・アイム・スペシャル・レイディ
ー(そう、私は特別な女性って知ってるわ)」と歌わせる。女性が
歌うパートの英語が、観客に若干伝わりにくかったようだが、徐々
に観客による「スペシャル・レイディー」が形成されていった。

  モーメンツ時代の「ノット・オン・ジ・アウトサイド」、「ラヴ
・オン・ア・トゥー・ウエイ・ストリート」、「ガタ・ファインド
・ア・ウエイ」、「セクシー・ママ」、「ルック・アット・ミー(
アイム・イン・ラヴ)」、「ウイ・ドント・クライ・アウト・ラウ
ド」など、レイ・グッドマン&ブラウンになってからの「ハッピー
・アニヴァーサリー」、「テイク・イット・トゥ・ザ・リミット」
など次々とヒット曲が歌われた。

  振りつけや、アルのバリー・ホワイト張りの「ライド・オン、ラ
イド・オン」のかけ声が観客を70年代に瞬時にタイム・トリップ
させる。

  後半、アル・グッドマンがマイクを持って話しだした。「199
2年、レイ・グッドマン&ブラウンとして来日し、ショウをやりま
した。その数か月後、ハリー・レイが突然他界してしまいました。
僕たちはものすごくショックを受けたんですが、ハリーがいなくな
っても、僕たちのどちらかが歌えなくなるまで『レイ・グッドマン
&ブラウン』という名前を残して、活動を続けていこうと決意しま
した。生前そんなハリーが好きだった曲があります。『アイル・リ
メンバー・ユー・ウイズ・ラヴ』という曲です。そして、僕たちも
この曲を歌うとき、いつも、ハリーのことを思いだしてしまいます
。聴いてください」

  そして、ビリーがリードをとって「アイル・リメンバー・ユー・
ウイズ・ラヴ」を歌いだした。『レイ・グッドマン・アンド・ブラ
ウン  2』(1980年作品)に収録されているハリーのファルセ
ットで歌われる曲だ。

  「なることは、なるようにしかならないよ。だから、自然の流れ
に身を任すだけ。涙をながす暇も、後悔する瞬間もない。ただ、僕
たちが一緒にいられたことを感謝するだけ。ぼくは君のことを愛と
ともにずっと忘れずにいるよ(I'll remember you with love )」
と歌われるこの作品は、別れた異性に対するあきらめの思いを歌っ
た歌だが、この「ユー(君)」がハリーに置き換えられて、アルと
ビリーに特別の感慨を与える。

  歌いながら、ビリーの感が極ったように見えた。口元が真一文字
になり何かを堪えているかのようだった。歌い終えたビリーは、後
のバスドラムの上にあった白いタオルをとり、汗をふいた。だが、
汗だけでなく、潤んだ目元も拭った(ぬぐった)。「ああ、泣いて
たんだ」と僕は思った。ビリーは、そのタオルをそのまま何気なく
、元のところに置いた。

  すると、こんどは後ろを向いたアルが、ビリーが使ったその同じ
タオルを無造作につかみ、汗を拭いた。アルは、ビリーが涙を拭っ
たことに気づかなかったかもしれない。しかし、30年以上もの長
きにわたって共にやってきたアルとビリーにとって、涙であれ汗で
あれ相手がそれを拭ったタオルを使うことなどは、なんら大問題で
はないのだろう。同じタオルを使える仲。ステージで一本のタオル
でつながるふたりの固い絆のようなものを垣間見た瞬間だった。

【2002年1月13日・日曜、六本木スイートベイジル】

(吉岡正晴)
    
MASAHARU YOSHIOKA
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