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ジョー・サンプル『宇宙のように大きな背中』
ジョー・サンプル・ライヴ
『宇宙のように大きな背中』
【2002年4月9日火曜・セカンド・ステージ・東京ブルーノー
ト】  



  ジョー・サンプルの背中がいつになく大きく見えた。繊細に、し
かし、大胆にグルーヴ感あふれるジョーのピアノは、叙情とファン
クが見事に融合する稀有な例だ。

  「ニューオーリンズにマリー・ラヴォーという女性の墓がある。
そこには、いつもX印が書かれている。ニューオーリンズに行って
、その墓参りができるといいことが起こる。それを探せないと・・
・。さあどうなるかわからないな(笑い)」

  そう説明して2曲目の「Xマークス・ザ・スポット」を彼は弾き
だした。いかにもジョーらしいタッチが随所に見られる佳曲だった
。ジョーは時折、楽曲の解説を交えながらプレイする。これに続い
て、この日は珍しくナット・キング・コールのピアノ曲を解説を加
えて弾いた。

  約3年ぶりの新作『ザ・ピーカン・トゥリー』を発売しての公演
ということもあり、新作からの作品も4曲ほど織り混ぜて披露。全
13曲中、最初の5曲がジョー・トリオの演奏。6曲目以降はすべ
て、新作で初お目見えした新人女性シンガー、リズ・ライトが歌っ
た。まるで、リズ・ショウの様相だ。

  彼女の声質は、前作で大々的にフィーチャーしたレイラ・ハザウ
エイ系のもので、ジョーのピアノと相まって、実に気持ちいい。彼
はまた新しいスターを発見したようだ。特に、新作に収められてい
る「ノー・ワン・バット・マイセルフ・トゥ・ブレイム」は、作品
の素晴らしさもあるが、ジョーのピアノのイントロから、その詩的
な雰囲気が最高潮に達した。
  
  リズが歌う歌詞が作りだす世界と、ジョーがその指先から醸し出
す世界が、見事なハーモニーとなり壮大な宇宙を生み出していた。
その時、ジョーの背中が宇宙のように大きく感じた。

【2002年4月9日火曜・セカンド・ステージ  東京ブルーノー
ト】  
吉岡正晴(音楽評論家)

(毎日新聞2002年4月20日付け・夕刊・楽庫に掲載)
    
MASAHARU YOSHIOKA
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