チャーリー・ハンター・ライヴ
『手品師の鉄則』
【2002年1月21日月曜・セカント・ステージ・東京ブルーノ
ート】
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ひとりで、ギターとベースを同時に弾く男がいるという噂が流れ
ていた。それを確かめに行った。男の名は、チャーリー・ハンター
。彼がステージに上がったときに持っていたものは、見たこともな
いようなギターだった。特製の8弦ギター。下の5弦がギター、上
の3弦がベース。そこからベースとギターの音が同時に聴こえる。
まるでマジックを見ているようだ。いくら目を凝らして見ても、そ
の指先のマジックのタネがわからない。ベース奏者がステージにい
ないのにベースの音が聴こえる。どうなってるんだ? いつ上の弦
を叩いているのだろう。
特製8弦ギターを自由自在に操り、ギター、ベース、さらにオル
ガン風の音などを巧みにミックスして、独自のサウンドの世界を生
み出す。これらの音がすべて彼の10本の指のみから出ていること
は奇跡だ。
ドラムス、サックス、パーカッションという無駄を一切省いた最
小限のバンドは、シンプルに、しかし、ファンキーな音でチャーリ
ーをサポートする。彼のいかにもエレキ・ギター風の音、リズム感
あふれるギターの音色と低音のベースは、虹色の表情を醸し出す。
シンプルさゆえに紡ぎだされていく色彩のイメージは無限だ。
10代初めから音楽にのめり込み始めたチャーリーは様々な音楽
を吸収するようになるが、ジャズだけでなく、ロック、R&Bにも
傾注した。70年代後半は、パーラメント、チャカ・カーン、コモ
ドアーズ、シックなどのR&Bのシングル盤を買い漁っていた。
一体、どうしてこんなスタイルを作りだせたのか、とチャーリー
に尋ねた。「自然に」と彼は答えた。そう、手品師は決してマジッ
クのタネを明かさないのが鉄則なのだ。僕は頭をひねりながら会場
を後にした。
【2002年1月21日月曜・東京ブルーノート・セカンド・ステ
ージ】
(音楽評論家・吉岡正晴)
(毎日新聞2002年2月2日付け夕刊・楽庫に掲載)
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