NO.666
2004/06/05 (Sat)
Naturally 7: The Magnificent 7 Proved The Theory Of Evolution, Naturally
進化論。

どこから書いていいものか。ナチュラリー7というグループ。あまりのすごさに言葉を失った。でてくるのは「ありえない、ありえない」ばかり。最初CDが到着していた時は、ジャケットを見て「あ、またヴォーカルグループか・・・」くらいにしか思ってなかった。5月23日にBBSにビズモさんの書き込みがあって、「ああ、きてたなあ」と思ってCDを聴いてみた。その時の感想は、「お、テイク6のフォロワーか・・・。でも楽器使ってるんだあ・・・。リズムボックスの使い方とか一昔前のブラコンみたいだなあ。ははは」というもの。

そして、書き込みの返事を書くために、ナチュラリー7のサイトなどをチェックし、いろいろ読んだりしているうちに、事の重大さに徐々に気付くようになる。改めてライナーノーツを見ると、すべての音が声で作られている、という。え、あのギターの音も? キーボードの音も? ヒューマンビートボックスはわかるが・・・。え〜〜、このギターのひずみ、なんなの? 聴けば聴くほど、次々と疑問符が浮かび上がってくる。そして、改めて集中して聴いてみると・・・。このベースの音、なに。バスドラの音、なに。キーボードの音、何。「ありえな〜〜い」 

火曜日(1日)、『フィールン・ソウル』収録。リクエストでナチュラリー7が来ていて、さっそくかけることにした。黒沢氏に「新しいア・カペラグループなんですよ」と一言説明してリクエスト曲「ゴーン・ウィズ・ザ・ウインド」(3曲目)他を聴いてもらう。黒沢さん、「あ〜、楽器も使ってるんですね」。「いやいやいやいや、実はこれぜ〜〜〜んぶ口なんですよ〜〜〜」 「えええっ? うそでしょう。だって、ギターとかはいってるよ」 「クレジットみてみてください。で、レコード会社の担当者がニューヨークで見たらしいんだけど、ほんとに全部口でやってるらしいんですよ」 「ええ?」とまだ信じられない様子。そして、もう一度、CDを聴く。「でも、何か使ってるでしょう」 「こんどの3日にショーケース・ライヴがあるんで、確かめてきますよ」 もちろん、黒沢さんも3日あいていたらどうかと誘ったが、別の仕事がはいっていて時間がとれないので、ひじょうに残念ながら、このライヴにはこれなかった。

何度も、CDを聴いて、まさにここのところの僕のヘヴィー・ローテーションになったわけですが、がぜんこのナチュラリー7に興味を持ったので、インタヴューをオファーして、土曜日(5日)に少し時間をいただき話をすることになった。何を聞こうかな。聞く事たくさんありすぎ。

さて、このナチュラリー7のことを伝えなければならない人物がいることを思い出した。そう、あの「テイク6ジャンキー」ことソウルメイト、ミチコだ。テイク6のライヴにこれまでに200回以上行っている世界一のテイク6ジャンキーに「ナチュラリー7って知ってる?」とメールすると、「ファーストが何年か前にでて、テイク6ファンの間でもちょっと話題になりました。でも、それほどでもなくて、そのCDも、誰かに貸して、今手元にない・・・」みたいな返事が。ファーストのことを知ってるあたりがさすがだ。で、早速この『ホワット・イズ・イット』のことを伝え、すぐに聴くようにと言った。

翌日あたり店頭からメールが。「今、試聴機で聞いてます。楽器は使ってるんですね」と。そこで、また同じ説明を。(笑) ひとしきりびっくりして、とにかくショーケースを見にくるように言う。

6月3日木曜。午後、僕は原宿ブルージェイウェイからリハが終ったあと、7時15分に戻ることででてくる。午後6時。渋谷DUO。ミチコが席をとっておいてくれた。ほぼまん前のセンター。最高の位置。やった。なんと彼女が友達と来ていた。すると、その友達も「テイク6ジャンキー」。ミチコの200回には及ばないものの、な、な、なんと100回以上ライヴに行っているという。二人以上あわせて300回以上か。「君たち、ギネスブックに申請しなさい。テイク6のライヴ通い、世界記録ってことで」みたいな、バカ話はどうでもいいが、なかなか始まらない。セットリストをもらったときに、聞くとライヴ自体は1時間弱らしい。いつもは、別に始まり時間がいくら押しても気にしない僕だが、この日はさすがに、じりじりした。

普段楽器が所狭しと置かれているステージに何もない。こんなにステージって広いんだ。ミネラルウォーターのペットボトルが14本。2本ずつタオルとともに舞台奥に置かれ、今夜のスターたちの登場を静かに待っている。

6時15分すぎ。まず司会のDJタロー氏登場。ひとしきりあおりと説明があって、6時17分、ひとりひとりが順番に声を出しながら登場してきた。それぞれの声の役割がCDのジャケットに書かれているが、ワイアレスマイクを持って、声を出して歩きながら登場。一人、また一人。声がひとつ、二つと徐々に厚みを増していく。

う〜ん、確かにあのベースの音、高いフルートの音、トランペット、スクラッチ、DJ、そして、ギターの音などが次々とでてくる。「なんだ、これは・・・」 あいた口がふさがらないとはこのこと。しかも、激しく踊りながら、それぞれの楽器を演奏するふりをしながらのパフォーマンス。一体何種類の楽器が、一体いくつの音の種類がでてくるのか。「ありえない・・・」

ギターをやっているのは、赤い帽子を被っていたジェイだった。ギターの弾きマネをしながら、マイクを口のところに持っていって、ずっとギターの音をだしていた。まいった! ダツボーです! 

「ドンチュー・ウォーリー・バウト・ア・シング」を歌い始めた。さらに「7ミニッツ」と題されたところでは、それぞれがソロを取った。これがまた圧巻。みな、芸達者。僕もいままでいろいろなアカペラグループ、ヒューマンビートボックスを見てきたが、彼らのプレゼンテーションはこれまで見た中で最高のものだった。

次々と驚嘆の瞬間が続いたが、一番驚いたのは、ジェームス・ブラウンの「アイ・フィール・グッド」をやるところ。レコードボックスからレコードを取り出し、ターンテーブルの上に乗せ、針を乗っける・・・ふりをする。(このあたりは、リアルブラッドのライヴでもありましたね!) すると、あのレコードの上を針が走るチリチリいうスクラッチ音をやったのだ! 思わず「おおおおおっ」と声をあげた。そして、「アイ・フィール・グ〜〜〜ド」をスクラッチいりでやる。信じられない。「ありえない」

ヒップホップ調の曲をやるときは、まさにBボーイ風にふりをつけ、コミカルな展開ではそうした動きも見せる。見ていても、7人がステージで動き、止まり、そして、また動くと実に飽きない。ヴィジュアルのプレゼンテーションもこれまでのア・カペラ・グループの中では抜群の出来だ。

ライヴを見て、やっと100パーセント、信じた。あのCDで聴かれる音は本当にすべて口でやっているんだ、ということを。これは、奇跡としかいいようがない。僕はこれまでテイク6を世界一のヴォーカルグループだと思っていた。だが、このナチュラリー7は、テイク6を越えたと思った。「テイク6以来の衝撃」である。テイク6を知ったのが88年のことだから、16年ぶりの衝撃ということになる。新たな21世紀のアカペラグループのスタンダードは、このナチュラリー7から始まる。今、日本中に数多くあるアカペラグループが、最高峰とテイク6を仰いでいるだろうが、これからは少なくとも、ナチュラリー7とともに東・西の横綱になるだろう。そんなすごさは、一足先にミチコがBBSに書き込んだ。

テイク6とナチュラリー7の大きな違いは、後者がひじょうにストリートな感覚があるという点だ。そして、メンバーがニューヨークという都会育ちというところも大きな違いだ。テイク6は南部の信心深い環境に育っている。だから、アカペラ・ゴスペルとしての立ち位置がしっかりしている。ナチュラリー7たちがやるようなヒップホップ的なものはテイク6は絶対にやらない。これはかなりの違いだ。

50年代のドゥワップから、60年代のソウル・ヴォーカル・グループ、70年代のア・カペラ・グループ。黒人ヴォーカル・グループは、時代とともにスタイルを変えていく。それは、変化とも呼べるし、進化とも言える。88年、シーンにテイク6が登場して、ア・カペラの歴史を劇的に変えた。これ以上のグループはもう決して登場しないだろうと思われた。しかしそれから16年、今、彼らを越えるグループが登場したのだ。ナチュラリー7は言ってみれば、テイク6の進化形である。彼らは、テイク6という偉大なグループがあったからこそ、今、この形のグループが出来、成り立っている。100メートル走の記録が10秒を切っていくように、棒高跳びの記録が少しずつ高くなっていくように、つまり、人類に進化論があるように、ア・カペラ・グループの歴史の中にも進化論があるのだ。ナチュラリー7は「ア・カペラ進化論」を見事に証明している。しかも、彼ら7人はそれを自然に(naturally)にやってのけた。アル・ジャロウ、ボビー・マクファーリン、そして、ボーイズ・トゥ・メン、テイク6が束になってひとつのグループになってしまった。そんな衝撃だ。

人間は、頭で考えたことがいずれ実際にできるようになるという。かつて美しい満月を見た人間は、あの月に行ってみたいと考えた。そして、人類は月に行った。普段の生活の中で聴こえてくる音、その音すべてを人間の口で再現しようと考えた人がいたとしてもおかしくない。今、彼らの口によってそれが現実のものとなった。大変、はるばる、遠くまでやってきてしまったのだ。

6月3日、その進化が見事に僕の記憶に刻まれた。この日のことは決して忘れない。帰り道、空には白い大きな満月が輝いていた。人が月に到達することが出来たように、ナチュラリー7は、ア・カペラの極地に到達している。

Setlist

1. Sit Back Relax
2. BMG
3. Don't You Worry 'Bout A Thing
4. 7 Minutes (Medley of Songs Each Members Sung)
--What A Wonderful World (Garfield)
--You're The Sunshine Of My Life
--I Love The Way You Move
--I Feel Good
--Time After Time
5. Another You
6. What Is It? (Including "Human Nature")

Interview

7. Broken Wings
8. Say You Love Me
9. Amazing Grace
10. Have I Told You

Encore Sukiyaki
Encore Gone With The Wind


(2004年6月3日木曜、渋谷DUO=ナチュラリー7・ライヴ)

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Diary Archives by MASAHARU YOSHIOKA
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