NO.614
2004/04/16 (Fri)
Frank McComb Live At Motion Blue: Music As Colorful Tapestry
(ネタばれになります。これからごらんになる方はご注意ください)

つづれ織。

おもむろにアコースティックピアノの前に座ったフランク・マッコムは、「これからのショウは、僕の日本デビューだ」とはにかみながら言ってインストゥルメンタル曲を弾き始めた。かなりのジャズののりだ。最新作『トゥルース』で歌物R&Bのイメージが植え付けられていたので、このジャズ感覚は小さな衝撃だった。とはいうものの、彼は元々ブランフォード・マルサリスのグループにもいたのだから、よく考えてみればライヴでこういうのりも自然だ。

ベース奏者をどこかで見たような気がした。なんと先週シーラEでプレイしていたレイモンド・マッキンレーだった。シーラが終った後、東京に残り、フランクを待っていたという。ドラムは、コーラ・コールマン。女性だ。フランクは「男にできて女にできないことはない」と言って彼女を紹介した。そして、ギターは日本人とのハーフで現在ロスアンジェルス在住のティム・スチュワート。ドラム、ギター、ベース、そして、キーボード。たった4人が生み出すグルーヴは見事だ。こういう音作りは最高に好き。彼がイギリスで受けるのは痛いほどわかる。

もちろん、ダニー・ハザウェイやスティーヴィー・ワンダーの影も降りてくるが、なによりフェンダー・ローズ(キーボード)と温かみのあるフランクの声が醸し出す70年代の風が心地良く頬にあたる。一曲が長く、その中に4人の自由自在なプレイがタペストリー(つづれ織)のごとく織り込まれていく。少し誉めすぎな表現をすれば、フランクは71年8月のロスアンジェルスのライヴハウス「トロバドール」と同年10月のニューヨークの「ビターエンド」に一瞬連れて行ってくれた。

そして、彼のステージにのめりこむにつれ、今、思う。彼の声がダニーやスティーヴィーに似ていなければよかったのに、と。もし彼がダニーやスティーヴィーと似て非なる声の持ち主だったら、もっともっと注目されたかもしれない。それほど彼はミュージシャン力のあるミュージシャンだった。これはやはりライヴを見ないとわからない。CDもよいが、ライヴはもっと良いタイプのアーティストだ。

ファーストセットは、正直に言えば、様子見、ウォームアップの段階だった。セカンドは徐々にテンションが上がっていき、後半は輝き始めていた。ファーストではやらなかった「ラヴ・ナチュラル」、さらに「ヒズ・アイ・イズ・オン・ザ・スパロウ」になる頃には完璧にフランクの世界になっていた。特にキーボード一本で歌い上げたゴスペルの名曲「ヒズ・アイ・イズ…」には感動させられた。ゴスペルとジャズと、なにより熱いソウルがほとばしりでていた。この熱唱を終えると、ベースのレイがフランクにタオルを投げつけた。それはあたかも「お前、こんなすごいパフォーマンスをしやがって」という賞賛と悔しさを表しているかのようだった。

「生きていく時に、誰かに辛い思いをさせられたり、誰かに足を引っ張られたりすることはよくあることだ。この曲はそういう状況に陥った人へ捧げる歌だ」と言って歌い始めたのが、本編最後の曲「キープ・プッシング・オン」。

終った後、少し話ができた。「このコメントは、おもしろいですね。実際の話なの?」 「ああ、そうだよ。アパートを追い出されそうになったことがあってね。レコード会社からのサポートが打ち切られ、妻と子供2人がいるのに。だから、ミュージシャンになりたいと思って一生懸命やっている連中なんかにも捧げているんだ。keep pushing on(やりつづけろ)ってね」

フランクがウォーリッツァーを弾き始めるたびに、なぜか「ホワッツ・ゴーイン・オン」を無性に聴きたくなった。で彼に尋ねた。「ホワッツ・ゴーイン・オン」はやらないのですか、と。「いやあ、昔はよくやっていたんだ。クラブなんかで、自分のオリジナルがない頃は、他の人の作品をたくさんやっていた。だけど、最近は自分の曲が増えたんで、そういうのはやらなくなっているんだ」 「いやあ、でも聴きたいな。あなたのヴァージョンで」 「そうか、じゃあ、練習して、やってみるよ。明日は取材なんかでリハの時間がないから、あさって『ホワッツ・ゴーイン・オン』と『リトル・ゲットー・ボーイ』(ともにダニー・ハザウェイ『ライヴ』から)をやろう。トリビュート・トゥ・ダニーだな」 

ファーストよりセカンドがよかったように、おそらく、日を追ってライヴがよくなっていくことだろう。最後のアンコール曲ではドラマーとのかけあいはいつ終るのかと思うほど長く続いた。それを見ていて、フランクは本当に音楽をプレイすることが大好きなのだなということがよくわかった。そして、彼は自分のつづれ織をさまざまな色の糸で紡いでいる。

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Setlist: first set

show started 19:03

01. One Block Past (Instrumental)
02. Shine
03. Another Day
04. Future Love
05. Action Speak Louder Than Words
06. Fool
07. Keep Pushin' On

Encore. Cupid's Arrow

show ended 20:26

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second set

show started 21:44

01. One Block Past (Instrumental)
02. Shine
03. Another Day
04. Future Love
05. Love Natural
06. Action Speak Louder Than Words
07. Fool
08. His Eye Is On The Sparrow
09. Keep Pushin' On

Encore. Cupid's Arrow

show ended 23:27

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(フランク・マッコム、ライヴは日曜まで横浜モーションブルーで)
http://www.motionblue.co.jp/

(フランク・マッコム、18日『ソウル・ブレンズ』[インターFM]午後3時から生放送でゲスト出演)

関連記事。フランクについて。

http://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200402/diary20040216.html

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(2004年4月15日木曜・横浜モーションブルー=フランク・マッコム・ライヴ)

ENT>MUSIC>LIVE>McComb, Frank


Diary Archives by MASAHARU YOSHIOKA
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