NO.409
2003/10/09 (Thu)
What Did 40 Year Old Wurlitzer See In Tokyo?
ウォーリッツァー君。

「僕は40歳のウォーリッツァー。本当の歳は知らない。少なくとも40歳以上だ。世界で初めてできたエレクトリック・キーボードのひとつ。1963年にジョー・サンプルという人に買われて以来、ずっと彼に仕えている。今まで僕は彼のテキサスのおうちから外にでたことはなかった。ご主人はいつも自宅で僕を弾いていた。だが、どういうわけか、ご主人様、今回僕を初めて一緒に旅に連れて行ってくれることになった。家を出るのも初めてなら、街を出るのも初めて。見たことない世界ばかりだ。しかも、飛行機に乗って、日本の東京までやってきた。テキサスの田舎と比べるとすべてが新しく現代的で、超新鮮。30時間以上の長旅を経て僕が落ち着いたステージは青山のブルーノート。ものすごくかっこいい空間だ・・・」

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立ち見もでている超満員のブルーノート。客席はいやがおうでも期待が高まっている。照明が落ち、バンドメンバーが続々とステージに上がっていく。皆それぞれの名前で活躍しているヴェテランたちばかりだ。ジョー・サンプルの合図でミュージシャンたちが一斉に音を出し始める。そして、サックスのウィルトン・フェルダーが吹き出した瞬間、もうブルーノートの空間すべてがクルセイダーズになった。

おそらく、フェルダーの生サックスを聴くのは10年ぶり以上だろうと思うが、ほんの1秒で、「おおおおっ、ウィルトン・フェルダー!」と心の中で叫んでしまった。10年以上も会っていない友でもお互いよく知っていれば、その会っていなかった冷凍されていた時間が会った瞬間、解凍される。フェルダーのサックスが吹かれ、そして、ジョー・サンプルのキーボードが前面にでた瞬間、あのクルセイダーズが長い冬眠から21世紀によみがえった。

彼らのようなミュージシャンこそ、まさにReal Music By Real Musicians For Real People!  僕の求めるモットーを具現化してくれる勇士たちだ。そして、クルセイダーズの核となる存在がジョー・サンプルとウィルトン・フェルダーであることが如実に表れたライヴだ。

ジョーが曲間で次の曲の紹介をする。このところ、ジョーはステージでよくしゃべるようになっているが、彼の話はいつもおもしろい。新作『ルーラル・リニューアル』から、レイ・パーカーのギターをフィーチャーした「ザ・テリトリー」を終えると、またしゃべりだした。

「今ここで使っているキーボードはウォーリッツァー社のものだ。ジュークボックスで有名な会社のエレクトリック・キーボードだ。ジュークボックスはニッケル(5セント硬貨)をいれるとレコードがかかるというものだな。ウォーリッツァー社は初期の電気ピアノを作った会社なんだ。1955年、深夜のテレビ番組『スティーヴ・アレン・ショウ』を見ていると、レイ・チャールズが電気ピアノを弾いていた。今まで私は(電気ピアノを)見たことも聴いたこともなかった。だが私はそれを見て、レイ・チャールズに怒りを覚えた。音が気に入らなかったのだ。(客席から笑い) あれは子ども向けのおもちゃだ、ピアノじゃない、って思ったんだ。レイ・チャールズは『悪い奴(bad man)』だと思った。(客席から笑い) そして、59年か60年頃、同じレイ・チャールズがこんなフレーズを弾くのを聴いた」

ジョーがレイ・チャールズの59年の大ヒット曲「ホワッド・アイ・セイ」のイントロのキーボードのところを弾く。客席から「ウォオ〜〜」という歓声。「それを聴いた瞬間、私はレイ・チャールズのことが大好きになった! (客席から笑い) そして、1963年、私はこのウォーリッツァーを購入した。(また客席から笑い) このキーボードは、今まで自分の家から出たことがない。レコーディング・スタジオにも持っていったことはないんだ。なんたって、貴重なアンティークだからな。(笑) そして、初めて日本にこれをもってきたんだ。(歓声)」

話はまだ続く。ジョーは2台キーボードを持ってきていた。もう一台はフェンダーだ。その解説が始まった。「1974年、クルセイダーズとしてのツアーが始まった時、4月にリハーサルをした。その時、私は初めてシンセサイザーというものを使ってみた。すると、メンバーから猛反発を食らった。『ジョー、やめてくれ、そんな楽器を使うのは。クルセイダーズの音楽でシンセサイザーなんて弾かないでくれ。それにはソウルがない』と。そこで、私は古いフェンダーを買ったんだ。そして76年のアルバム『フリー・アズ・ザ・ウィンド』用に『イット・ハプンズ・エヴリデイ』という曲を作った」

フェンダーのキーボードに導かれるその作品は、ジョーの甘美な叙情的メロディーが醸し出されるクルセイダーズの名曲のひとつだ。それにしてもしっかりしたリズム隊。ケンドリック・スコットのドラムス、フレディー・ワシントンのベース、レイ・パーカーのギター、そして、トロンボーンにスティーヴ・バクスター。完璧に黒いリズム隊。ゴスペル、ジャズ、R&B、ファンク、ソウル・・・。あらゆる要素がぎゅう詰にされたブラックネスがそこにある。

「イット・ハプンズ・・・」が終わりジョーが再びマイクを取る。「69年か70年頃だったか、私たちはキャロル・キングの『ソー・ファー・アウエイ』という曲を録音した。(キングの名作『タペストリー』に収録されている作品。クルセイダーズのものは71年に発売) その時から、われわれはジャズ・クルセイダーズから、クルセイダーズとなった。あのアルバムはターニング・ポイントだった。だが、私たちは依然変わらず私たちだ」 この曲の途中で、ウィルトンとスティーヴのツインの「サークル・ブリージング」が披露された。「サークル・ブリージング」はまったく息継ぎなしに何分も同フレーズを吹く奏法。循環奏法と言うもの。一体いつまで息が続くのか不思議に思うが、これは訓練によって、吹くのと吸うのを同時にやれるようにしているために、何分でも続けることができる。いろいろなサックス奏者が技として披露するが、これをツインで同時にやられたのは初めてだった。もちろん観客席からは大喝采が巻き起こった。

アルバム『ストリート・ライフ』からの「カーニヴァル・オブ・ザ・ナイト」を終え、またまたジョーが語り始めた。次の曲はかつてジョー・サンプルのライヴでも披露された彼のソロアルバム『ピーカン・トゥリー』に収録されている作品「Xマークス・ザ・スポット(マリー・ラヴォー)」だ。ジョーの話に聞き耳をたててみよう・・・

「諸君は、ニューオーリンズに来たことがあるかな。来たことがない? あそこはとても楽しい街だよ。ここにはヴードゥーのクイーンがいる。その名はマリー・ラヴォーという。ニューオーリンズの墓地にラヴォーの墓がある。彼女は1870年代に死んだ。だが彼女のスピリットはニューオーリンズ中に生きている。だからニューオーリンズに行ったら、諸君はその墓地に行き、白い石でできている彼女の墓に黒のペンかなんかでX印を3つつけなければならない。そうしないと、悪いことが起こるんだよ。(笑) だからマリー・ラヴォーの墓にX印を3つつけ、グッドラックになることを祈るよ。(笑)」 そして後ろにいたレイ・パーカーを紹介する。「レイ・パーカーはブラック・マジック(黒魔術)師だ。デトロイトのフードゥー教だ。(笑)」 レイが魔術師よろしく腕を振る。そして始まった「Xマークス・ザ・スポット」では、レイ→ウィルトン→レイ、これにウィルトンとスティーヴという豪華なソロリレーが見られた。

確かにこのバンドは、ジョー・サンプル主導のバンドだ。ウィルトンはこのバンドの一員という位置付け。そして、アンコールの1曲目は新作『ルーラル・リニューアル』のタイトル曲、さらにそれが終わるとやにわにレイ・パーカーがマイクスタンドをステージ中央の前に持ってきた。何かが起こる気配。

「僕が若かった頃、18歳−19歳くらいだった頃、よくクルセイダーズを聴いていた。だから、今日こうやってクルセイダーズと一緒にステージに立てるなんて本当に光栄だ! (大きい声で) クルセイダーズ! 今日はクルセイダーズの夜だから・・・僕は、「パーティー・ナウ・・・」(節をつけて歌いながら)などは、歌わない。僕は、「ア・ウーマン・ニーズ・ラヴ」も歌わない・・・(拍手) 「ゴーストバスターズ」も歌わない。やるとするなら、僕たちは今日、ジャズ・ヴァージョンでやってみよう。いいか、簡単だよ。Who you gonna call? (誰を呼ぶんだ?) と言ったら、みんなはGhostbusters! じゃなくて、クル・セイダーズ! って叫ぶんだ。いいかな?」

「Who you gonna call?」 観客が「クル・セイダーズ!」 レイはギターで「ゴーストバスターズ」を弾きだした。ブルーノートが昔ながらのディスコになった。

ジョー・サンプルの曲にまつわるストーリーは、その作品への理解を深める上で非常に興味深いものだった。およそ10年ぶりのクルセイダーズ復活のライヴは、古き良き時代を思い起こさせるのと同時に、彼らがまだ現役ばりばりのミュージシャンたちであることを改めて知らしめた。1960年にテキサス州で結成されたグループは今年で43年の歴史を数える。79年日本で『ストリート・ライフ』がヒットしたとき、仮に20歳だった若者たちは今44歳。仕事も油がのりきっているところだろう。この日のブルーノートはいつになくそうした40代から50代の人たちの姿が目立った。彼らは今でも音楽を聴いているのだ。だが、それでも20代と思える若い人たちもいた。なんらかの方法で彼らの音楽を知ったに違いない。43年もやっていれば、ファン層も多岐にわたるようになる。

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「これで今日のお勤めもおしまいだ。ふ〜〜。40歳でも僕の音はまだまだ元気だろう? ご主人様は64歳だからね。最低でもご主人様の年齢くらいまでは音を出しつづけるつもりだ。一日に2ステージもこんなに激しく演奏するのは初めてかもしれない。でも、観客の人たちが毎晩毎晩熱狂的なんで、僕もどんどんいい音を出してしまうんだ。横のフェンダー君は僕より10歳くらい若いからね。でも、彼にはまだまだ負けないよ」

ミュージシャンたちが去った後も、1963年にジョーのものになって以来初めて旅に出たウォーリッツァーのキーボードは、そのステージにしっかり座り、ブルーノートの客たちを見ていた。テキサスの片田舎を初めてでてやってきた外国の地、東京はそのウォーリッツァー君にどう映ったのだろうか。

Set List

show stars 21.47

1. Free As The Wind (From "Free As The Wind")
2. Shotgun House Groove (From "Rural Renewal")
3. The Territory (From "Rural Renewal")
4. It Happens Everyday (From "Free as the Wind")
5. So Far Away (From Crusaders "1")
6. Carnival Of The Night (From "Street Life")
7. X Marks The Spot (Marie Laveau) (From Joe Sample's "Pecan Tree")
Enc 1. Rural Renewal (From "Rural Renewal")
Enc 2. Ghostbusters (Crusaders) / Ray Parker Jr.

show ends 23.06


【2003年10月8日水曜・セカンド・ステージ 東京ブルーノート】

ENT>MUSIC>LIVE>CRUSADERS

タイトル・ウォーリッツァーの初体験


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ジョー・サンプル・ライヴ評

http://www.soulsearchin.com/entertainment/music/live/sample19990608.html

http://www.soulsearchin.com/entertainment/music/live/joe20020409.html

ブルーノート・クルセイダーズ公演

http://www.bluenote.co.jp/art/20031006.html

Diary Archives by MASAHARU YOSHIOKA
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