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アース・ウィンド&ファイアー『ザ・プロミス』
cover
アース・ウィンド&ファイアー
『ザ・プロミス』

エイベックス(カッティング・エッジ)
CTCR-18061

2003年06月25日発売
2548円


原題 : Promise
アーティスト : Earth Wind & Fire
原盤番号 : Kalimba 9730022
原盤発売 : 2003年 5月20日
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   今度あなたのCDライブラリーに加わることになった一枚のCD
(アルバム)をご紹介します。


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『モーリスの約束』
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   約束。

   1970年に結成され今年で33年の歴史を数えるアース・ウィ
ンド&ファイアーのリーダーは、モーリス・ホワイト。  モーリス
は、常にポジティヴ(前向き)なメッセージを語り続けている。ア
ースが、スタジオ録音としてはおよそ7年ぶりの新作をだした。そ
のタイトルは『ザ・プロミス』。

   昨年(2002年)11月、アースがコンサートのために来日し
たときには、ほぼ録音を終えていた新作『ザ・プロミス』が、いよ
いよ日の目を見ることになった。来日時に、モーリスの他にラルフ
・ジョンソン、ヴァーディン・ホワイトからも話を聞くことができ
た。(モーリスは単独、ラルフとヴァーディンが同時に取材)  そ
の話の中からモーリスの約束に迫ってみよう。

   モーリスが本アルバムにこう言葉を寄せる。

   「ここに収められた作品群は、心からの音楽をみなさんに送り届
ける献身的努力をすることへの約束です。閃きを与えられた音楽を
あなたたちと共有する−−人生のドラム・ビートに体をゆらし、心
のリズムに踊る。私たちが演奏し、歌う音楽によって、私たちはこ
の星を愛と光で包み込みたい。  それが私たちのプロミス、約束で
す。  私たちは調和の中で生きていくことを学ばなければなりませ
ん。そして世界中の兄弟、仲間たちを称えましょう」

   アースのメンバー4人のひとり、ラルフ・ジョンソンはこの新作
についてこう語る。

   「このアルバムは、ここ何年かで作ったアルバムの中でもベスト
の出来に仕上がった。素晴らしい楽曲、見事なサウンド・プロダク
ション、メッセージ。すべてがベストだ」

   さらにヴァーディン・ホワイトが続ける。  「(この新作は)今
という時代を反映したアルバムになっていると思う。随分と長い時
間をかけて作った。新たなクリエイティヴ・ピークを迎えたような
気分だ」

   彼らふたりはほぼ交互に話す。

   ラルフ。  「あの911(2001年9月11日に起きたニュー
ヨークのワールド・トレード・センターなどに対するテロ事件)以
来、世界のゲームのルールが変わった。人々は少しばかり自信がな
く、確信もない。  そこで彼らはちょっとした希望を求めているん
だ。今度の新作は、そうした新しい時代へのメッセ−ジと言えるか
もしれない」

   ヴァーディン。「人々は以前から僕たちの『スピリット』、『ヘ
ッド・トゥ・ザ・スカイ』、『ザッツ・ザ・ウェイ・オブ・ザ・ワ
ールド』のようなメッセージのある作品を愛してきてくれていた。
ロスのある放送局のモーニング・ショウは、911以降一か月間、
マーヴィン・ゲイの「ホワッツ・ゴーイング・オン」と僕たちの「
ザッツ・ザ・ウェイ・オブ・ザ・ワールド」をテーマ曲としてかけ
ていたんだ」

   「燃え滾る(たぎる)心が愛の欲望をうみだす。今いる世界より
高く高く舞い上がる。この特別な日に僕たちは手を携えてやってき
た。僕たちのメッセージを高らかに歌うために。悲しみにくれた日
もあった。未来への道が閉ざされたこともあった。だが自身の中の
心と魂を探すことができるなら、  必ずや心の安らぎを見出すだろ
う。世界が冷たくみえたところで躊躇することはない。決して老人
などではないのだから、若き日の心を忘れずにいよう。それが今の
世界というもの。花を植えよう、真珠を育てよう。子供は光り輝く
心を持って生まれて来る。だが、今の世界がその心を冷たくしてし
まうのだ。それが現状の世界というもの」(「ザッツ・ザ・ウェイ
・オブ・ザ・ワールド=邦題・暗黒への挑戦」より)

   911の後、平和を願う多くの歌がかかった。  現状の世界を憂
い、前向きな明日を歌うこの「ザッツ・ザ・ウェイ・オブ・ザ・ワ
ールド」は、テロ後にもっともぴったりの一曲だった。

   ラルフ。「たしかあの2日後だったか、南に向かう途中、ニュー
ヨークを通った時に煙が見えた。  その日ニューヨークのジョーン
ズ・ビーチのコンサートは、キャンセルした。だがその次の(公演
地)ヴァージニア・ビーチについて僕たちは考えたよ。果たしてコ
ンサートをやるべきか止めるべきか。でも、家に戻って静かにして
いるよりも、僕たちがライヴを見せて、前向きなメッセージを送っ
たほうがよりいいという結論に達したんだ。結局、ヴァージニア・
ビーチでライヴをやったんだが、観客はアメリカの旗を振り、もの
すごく感傷的になった。  我々は平凡なアーティストではないから
ね。僕たちの歌で人々をハッピーにできるなら、そうしようと思っ
た。  ショウ・マスト・ゴー・オン(ショウは続けなければならな
い)だよ」

   ヴァーディン。「911以降、僕たちの(音楽的)スタンスが変
わったということはない。僕たちの(歌の)メッセージは以前から
変わらないからね。人々もそれを知っている。僕たちはこれまで僕
たちが歩んで来た道をこれからも進んで行くよ」

   ラルフ。「アースの最大のメッセージは、そうだな、ポジティヴ
に行こう、夢を持ち続けよう、自分自身に正直でいよう、周囲にい
る人に対して気を使おう、とか、そういうことじゃないかな」

   一方、モーリスは「我々は以前からの伝統を持ち続けている」と
前置きしながらと新しいアース・サウンドについて言及した。

   最近の作品と、70年代の作品との大きな違いはなんだろうか。
モーリスは一般論としてこう答える。「70年代の作品はとてもヒ
ューマンな感じがする。90年代以降のものは、機械がすべてをし
きっている感じで、人間的要素が少ない。70年代のものは、より
オーガニックでオリジナリティーがあったように思えるね。最近の
ものはオリジナリティーがあまりないように感じる」

   では、アース・ウィンド&ファイアーのオリジナリティーとは。
「それは、以前から変わらないものだ。  まずホーン・セクション
だ。そして私自身の歌詞の発音、フィリップ(・ベイリー)のハイ
ヴォイス、素晴らしい楽曲のプレゼンテーションかな」

   最近のアースのサウンドは、打ち込みが多くなっているが、その
あたりはどのようにとらえているのか。「確かに最近は打ち込み系
が多くなっている。それはラジオ局がそうしたサウンドを求めてい
るからだ。オーガニック(自然)な昔ながらのサウンドに、あまり
反応してこない。私たちは、機械的なものとオーガニックなものを
うまくバランスよく使わなければならない」

   ならば、なぜアメリカのトップ40ステーションは、最近のアー
スの曲をかけないのでしょうか。「なぜなら、我々が今トップ40
じゃないからだ。(笑)  我々は、(ラジオ業界の)『今月のお気
に入り』ではないんだよ。だから、トップ40局は私たちの曲をか
けない」

   では、なぜあなたたちはトップ40ではないのでしょう。「なぜ
なら、私たち自身がトップ40(でかかるということ)を気にして
いないからだ。私たちが狙っているのは、もっと洗練されたリスナ
ーたちだ。より複雑で洗練されている音楽を提供しているから、ト
ップ40でかかるような平凡なアーティストではない、ということ
だ」

   ということは、あなたはそうした洗練されたリスナーのために音
楽を作っている、ということになりますか。「そうだね、それに加
えて、音楽を作る時は自分自身に対して正直になっているよ。自分
が信じる音楽を世に送り出そうとしている。音楽を作る時には、敏
感になり、何かをチャレンジするようにしている」

   「最近の音楽を作る若い連中は、ミュージシャンではない。コン
ピューターを操る連中だ。たとえばコ−ド進行なども考えない。も
ちろん私たちもコンピューターの天才は起用しているが、彼は同時
にミュージシャンでもある」

   では、コンピューターを音楽の中に取入れるときのカギはなんで
しょうか。「よいビートを作ることかな」

   ここでこのアルバムに収録されている「ワンダーランド」の話に
なり、アンジー・ストーンが参加していることを明かされた。

   なぜアンジーと一緒に?  「彼女が、私たちと一緒に何かをやり
たがったからだよ」

   アースの初期には女性シンガーがいた。一方、シカゴにロータリ
ー・コネクションというグループがいた。ミニー・リパートンがリ
ード・シンガーだった。ロータリーは、アースの初期の段階である
種のプロトタイプのようなものだったか。「確かに、ロータリーに
はミニーがいた。そして、ロータリーをプロデュースしているのは
チャールズ・ステップニーだ。彼は後に私たちのグループと一緒に
仕事をする。その点でロータリーと私たちのグループに類似性があ
ることは事実だ。ただ、私がその頃コーラス・ハーモニーという点
で参考にしたのは、むしろフィフス・ディメンション(60年代後
半から70年代初期にかけて多くのヒットを放った黒人のポップ・
コーラス・グループ)だった。だがどんどん変化していった。もち
ろん私たちが狙っていた音楽性は彼らとはまったく違ったがね」

   アースのごく初期のコーラスをフィフス・ディメンションに影響
を受けた、というのは非常に興味深かった。

   新作『ザ・プロミス』には、911の影がうっすらと覆う。しか
しモーリスの約束は30年前の「キープ・ユア・ヘッド・トゥ・ザ
・スカイ」(73年)の時から、実は不変なのだ。そしてそのメッ
セージは常に普遍である。普遍であること、それもまた、モーリス
の約束。

■アルバム紹介

   本アルバムは、アース・ウィンド&ファイアーのスタジオ作品と
しては96年発表の『アヴァター』以来、約7年ぶりのもの。原盤
番号は、Kalimba 9730022 。全米発売は2003年5月20日。プ
ロデュースはモーリス・ホワイト。  曲ごとのミュージシャンなど
は、クレジットを参照してください。

   アースは、90年発表のアルバム『ヘリテージ』を最後にCBS
を去る。その後、ワーナー(リプリーズ・レーベル)へ移籍して、
93年9月に『ミレニュウム(千年伝説)』を発表。その後、エイ
ベックスに移籍。95年7月に『ライヴ・イン・ヴェルファーレ』
を、96年7月に『アヴェタ』を発表した。この『アヴェタ』は、
アメリカではほぼ同じ収録曲で『イン・ザ・ネーム・オブ・ラヴ』
と題され翌97年に発売。さらに2003年3月『ライヴ・イン・
リオ』が発売されている。

   本作はそれに続くもの。サウンド的には、前作さらにその前前作
の延長線上にある。打ち込みとミュージシャンのサウンドを適度に
ミックスしている。

   カリンバの音も印象的な1「オール・イン・ザ・ウェイ」につい
てモーリスは、「シングル向き、ダンス・マーケット向きの曲」と
いう。どこか「ファンタジー」を思わせる雰囲気もある。

   フィリップ・ベイリーの声が主役の2「ベッチャ」はバラード。

   個人的に本アルバム中一番気に入ったのが9「ネヴァー」。「こ
れは才能あふれるグレッグ・カーティスという男と一緒に書いた曲
だ」とモーリスがコメントするが、ミディアム調の佳曲。途中のサ
ックスの響きもいい。これもシングル向けだ。

   その次におもしろいと思ったのは、12「ソウル」。ちょっとア
ースにしてはベースのきいたかなりファンキーな作品。  ホーン・
セクションが入ると、どこかタワー・オブ・パワーあたりを思わせ
る。なかなかの新機軸だ。

   ジャズの要素をいれたというのが4「ホワイ」。

   「ソー・ラッキー」は、フィラデルフィアのルーツが参加。「(
ルーツとの)セッションは素晴らしかった。彼らからアプローチし
てきた。アルバムを聴いていたので、一緒にやってみた。そしてル
ーツがアンジー・ストーンを紹介してくれた。彼女は5『ワンダー
ランド』を一緒にやっている」(モーリス)


   これでこのアース・ウィンド&ファイアーの『ザ・プロミス』の
アルバムはもうおしまい。いかがでしたか。このCDがあなたのC
Dライブラリーにおいて愛聴盤となることを願って・・・

[May 8、 2003: MASAHARU YOSHIOKA]
"AN EARLY BIRD NOTE"
"LINERNOTES SINCE 1975"
http://www.soulsearchin.com


(曲順は、アメリカ盤と日本盤は微妙に違います)


(2003年5月24日アップ)
    
Masaharu Yoshioka
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