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フィリップ・ベイリー『ソウル・オン・ジャズ』
cover
フィリップ・ベイリー
『ソウル・オン・ジャズ』

ユニバーサル
UCCT−1050
2548円

2002年4月10日発売
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  今度あなたのCDライブラリーに加わることになった一枚のCD
(アルバム)をご紹介します。

  フィリップ・ベイリーの『ソウル・オン・ジャズ』

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フィリップ・ベイリー、ジャズを歌う

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  「フィリップ・ベイリーが新譜でジャズを歌うんですよ」

  レコード会社の担当者からそういう連絡をもらい、驚き、いろい
ろなことを想像した。でも、瞬時にかなりいいアイデアだと思った
。まもなくCDが送られてきたのでさっそく聴くと、いやあ、これ
がいい。ゴスペル歌うより、あってる!  改めてフィリップ・ベイ
リーって素晴らしいヴォーカリストだなと感じた。それが本作『ソ
ウル・オン・ジャズ』である。

  東京・深夜1時はロスアンジェルス・朝8時。行きつけのソウル
バーからあわてて戻り、電話をかける。フィリップ・ベイリーへの
電話インタヴューだ。ちょうどこの新作が発売されること、さらに
4月か5月に来日予定が組まれていることなどから、一度電話で取
材することになり、その日時が設定されていた。

  ところが、プッシュした番号からは、留守番電話の「はい、メッ
セージを信号音の後においれください」というフィリップの声がむ
なしく流れてくるだけ。

  「おや、朝8時でいいはずだが・・・」

  何度かかけてみるものの、やはり、そのたびに留守電になる。メ
ッセージもいれたが、一応何かの時のためにもらっていたマネージ
メントの番号にかけてみると、「15分以内に、こちらから電話す
る」という。

  10分も経たぬ内に、マネージャーからかかってきた。

  「今から電話してくれ。フィリップはあなたからの電話を待って
いる」

  もう一度、さっきと同じ番号にかけると、今度は彼が出てきた。

  開口一番、「まもなく飛行場に行く迎えの車が来るので、あまり
時間がないんだ。スケジュールを組み直そうか」と言う。
  こちらは原稿の締切が迫っていたので、その日でなければだめだ
った。短くてもいいので、簡単に話を聞くことにした。

  新作であるこの作品のタイトルは、『ソウル・オン・ジャズ』。
「ソウルでジャズを」とか「ジャズをソウル風に」と言ったところ
か。

  フィリップ・ベイリーが電話口の向こうで説明する。

  「僕はもともと子供の頃からジャズが好きだったということがあ
る。スタンダード・タイプのジャズ・アルバムを作ろうということ
だった。そして、その時話し合ったのが、ジャズ曲をもう少しだけ
今風R&Bタイプの作品にしようということ。僕は基本的にはソウ
ル・シンガー、ポップ・シンガーと呼ばれている。で、これは、ソ
ウル・シンガーがジャズにアプローチするといったアルバムだ。ジ
ャズといっても、少しソウルの要素があるジャズ、それをソウル風
にやった、という感じかな」

  プロジェクトの始まりは、こうだ。

  「元々はデイヴ・ラヴ(社長)とボブ・ベルデン(プロデューサ
ーのひとり)とで話し合ったところから始まっている。3人で選曲
した。何曲か知らない曲もあった。つまり、ちょっとは知っている
が、歌詞すべてを覚えている曲ではない、ということだ。一曲を除
いては、ここに収録された作品をかつてプロとして歌ったことはな
い」

  その1曲とは、もちろん、アース・ウインド・アンド・ファイア
ーのヒット曲「キープ・ユア・ヘッド・トゥ・ザ・スカイ」。言っ
てみればセルフ・カヴァーである。

  それまで、ソウル、R&B、ゴスペルと歌ってきたフィリップに
とってジャズを歌うことの違いは何か。

  「ジャズを歌うというのは、より自由度があるということかな。
旅ができる気持ちよさみたいなものだね。ジャズは、タイムレス(
時代を越える)ものかなあ。R&Bは、今日ここにあっても、明日
には流行遅れになっていたりする。ジャズは、クラシックのような
存在。R&Bは、もっと今で、トレンディーなもの」

  ジャズにアプローチするとき、何を考えているか、と尋ねた。
  すると彼は一言答えた。

  「ナッシング(なにも考えてない)」(苦笑)

  コンセプトは、タイトルが示している。「ソウル・オン・ジャズ
」だ。

  来日時ののライヴは、このアルバムからの作品をやるのだろうか
。

  「もちろん、やるよ。もうシャワーにはいらなきゃ」

  彼はそういいながら、電話を終えた。

  あのロバータ・フラックをして、「何と美しいファルセットでし
ょう」と評させたヴォーカルの持ち主。それが、フィリップ・ベイ
リーだ。70年代から80年代にかけて人気となったアース・ウイ
ンド・アンド・ファイアーのリード・シンガーのひとりとして活躍
したフィリップ・ベイリーは、83年、初のソロ・アルバムを出し
た後、グループ活動と並行して、ソロ活動を続けている。ソロとし
ては、ゴスペルを歌い、アルバムを発表していたこともある。

  そんなフィリップ・ベイリーは1951年5月8日コロラド州デ
ンヴァー生まれ。1971年、モーリス・ホワイトに誘われ、アー
スに参加。アースのファルセットを歌うリード・ヴォーカルとして
、様々な大ヒットを生み出す。「アイル・ライト・ア・ソング・フ
ォー・ユー」(77年作品『オール・ン・オール』=邦題『黙示録
』に収録)は、フィリップなしには存在しえない名曲だ。83年、
初のソロ・アルバムを発表。84年12月発表のフィル・コリンズ
とのデュエット曲「イージー・ラヴァー」が大ヒットし、ソロ・シ
ンガーとして注目されるようになった。

  その後、フィリップはゴスペルに目覚め、ゴスペル・アルバムを
発表。さらに、レコード会社を移籍し、いくつもの作品を出してい
る。

■アルバム紹介

  フィリップ・ベイリーのユニヴァーサルにおける2枚目。およそ
3年ぶりの新作となる。原盤番号は、HEADSUP  HUSA
9068。全米発売は、2002年3月。ユニヴァーサル系におけ
る作品としては、『ドリームス』(HUCD3048)以来の新作
。

  メイン・プロデューサーのボブ・ベルデンは、スティングやプリ
ンスの作品をジャズ風にアレンジして発表している人物。

  コンセプトは、フィリップがジャズを歌う、というもの。これま
でのフィリップのアルバムでは聴かれないまったく新しい顔を見せ
た。この声に、こうしたサウンドが非常にフィットする。

曲目紹介

1、インディスクレションズ

  ウエザー・リポートの85年のアルバム『スポーティン・ライフ
』に収録されている同グループのメンバーである、ジョー・ザビヌ
ルの作品。元はインストゥルメンタル曲だが、フィリップ・ベイリ
ーが詞をつけた。

2、ディア・ルビー

  伝説的ジャズ・ピアニスト、セレニアス・モンクの作品。元々の
タイトルは、「ルビー、マイ・ディア」で、モンクが『マン・アイ
・ラヴ』などの60年代のアルバムで録音している作品。

3、コンペアード・トゥ・ホワット

  ソングライター、ジーン・マクダニエルズの作品で、69年に発
売されたレス・マッキャン&エディー・ハリスのアルバム『スイス
・ムーヴメント』に収録。レスとエディー・ハリスのふたりによる
演奏でヒットした。ソウル・チャートで30位を記録している。

4、ネイチャー・ボーイ

  今は亡き名シンガー、ナット・キング・コールの1948年の大
ヒット。R&Bチャートで2位を記録。
  本作11曲の中でも、ずばぬけて印象度が高い1曲。完璧にフィ
リップの世界を作りあげている。2002年フィリップの作品と言
えば、それで堂々通ってしまうようなヴァージョンだ。

5、ボップ・スキップ・ドゥードゥル

  DJスマッシュの作品にベイリーが歌詞をつけたポップな軽い感
じの作品。DJスマッシュは、ニューヨークのクラブ、ジャイアン
ト・ステップで回し始めて知られるようになった。アシッド・ジャ
ズとハウスをミックスするタイプのDJの草分。カサンドラ・ウィ
ルソンや、メデスキー・マーティン&ウッドらのリミックスなどを
てがけ、頭角を出すようになった。ボブ・ベルデンは、スマッシュ
の作品でサックスを吹き、ベルデンのアルバムでもスマッシュが参
加しているというもはや身内。

6、アンリストレインド

  マイロン・マッキンリーの作品。彼は、このアルバムでも多くの
曲でキーボードを演奏しているロスアンジェルスを本拠に活躍して
いるミュージシャン。97年頃から頭角を表しだし、チェロキー、
エイドリアン・エヴァンス、ドック・パウエル、クリスティーナ・
アギレラなどのセッションに参加している人物。

7、マーシー・マーシー・マーシー

  ジョー・ザビヌルが書いた作品で、彼が所属していたキャノンボ
ール・アダレイのバンドで、67年に大ヒットした。R&Bチャー
トで2位を記録。同曲は、67年度のグラミー賞「ベスト・インス
トルメンタル・テーマ」部門(作曲家の賞)の候補作となった。
  これもかなり斬新なヴァージョンだ。

8、キープ・ユア・ヘッド・トゥ・ザ・スカイ

  ごぞんじアース・ウインド・アンド・ファイアーのヒット曲。ア
ースの演奏で74年にヒット。ソウル・チャートで23位を記録し
た。アルバムは73年の『ヘッド・トゥ・ザ・スカイ』。いかにも
、今風のエリカ・バドゥあたりがやりそうな雰囲気のソウルになっ
ている。

9、サムタイム・アゴー

  ジャズ・ピアニスト、チック・コーリアの作品。チック・コーリ
アの72年のアルバム『リターン・トゥ・フォーエヴァー』に収録
されている。これも、アップテンポにした実にかっこいいヴァージ
ョン。フィリップの新境地だ。

10、テル・ミー・ア・ベッドタイム・ストーリー

  フュージョン系、ジャズ・ピアニスト、ハービー・ハンコックの
作品。彼の74年の『トレジャー・ゴースト』などに収録されてい
る。元々は、彼が69年から70年にかけて録音したアルバムに収
録されている。「ネイチャー・ボーイ」、「サムタイム・アゴー」
と並んで、この「ベッドタイム・・・」は、本CDの中でもベスト
・カット。

11、レッド・クレイ

  ジャズ・トランペッター、フレディー・ハバードの74年のアル
バム『ザ・バッデスト・ハバード』に収録されている作品。

  これでこのフィリップ・ベイリーの『ソウル・オン・ジャズ』の
アルバムはもうおしまい。いかがでしたか。このCDがあなたのC
Dライブラリーにおいて愛聴盤となることを願って・・・    

[FEBRUARY 13, 2002: MASAHARU YOSHIOKA]
"AN EARLY BIRD NOTE"          
"LINERNOTES SINCE 1975"       
http://www.soulsearchin.com 


                      「僕は、R&Bを歌い、ジャズを歌い、ゴ
スペルもやった、フィル・コリンズとも歌った、あらゆる種類の音
楽が好きだ。」
    
[FEBRUARY 13, 2002: MASAHARU YOSHIOKA]
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