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ニコラ・ピオヴァーニ 『ライフ・イズ・ビューティフル』
ニコラ・ピオヴァーニ 
『ライフ・イズ・ビューティフル』
東芝EMI VJCP 68134、 
ASIN: B00005GOIX
2548円
1999年5月8日発売



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   今度あなたのCDライブラリーに加わることになった一枚のCD
をご紹介します。

   ニコラ・ピオヴァーニの『ライフ・イズ・ビューティフル』

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恋、笑い、涙、人生は素晴らしい
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   一度見た映画を二度目以降に見るときに、主人公よ、それ以上先
に行くな、とか、そこでそうしちゃだめだ、とか、もう一度考え直
せなどといったことを思うことがある。そのエンディングがこちら
の望みと違うとき、特にそんなことを感じるものだ。

   たとえば、『大脱走』で、脱走兵十数人がトラックに乗せられて
野原に行くシーン。「休憩だ」と言われて、トラックからそうやす
やすと降りないでくれ。『シンシナティー・キッド』の最後の大勝
負のシーン。マックイーン演じるキッドは、自分がエースのフルハ
ウスを持ったとき、ポーカーの名人の手(ストレート・フラッシュ
)をただのフラッシュだと考えレイズしてしまい、その勝負に負け
る。そのシーンに来るといつも、そこでレイズするな、と叫んでし
まう。

   画面を見ていて、「時間よ、そこで止まれ」、あるいは、「そこ
から先は、巻き戻しだ」と感じる瞬間は、結構あるものだ。僕はそ
ういうシーンを勝手に「時間よ、止まれシーン」と呼んでいる。

   実は、この『ライフ・イズ・ビューティフル』にもそんな「時間
よ、止まれシーン」がある。かなり終盤だが、主人公グイドがドイ
ツ兵に捕まってしまい、連行されるときのことだ。彼が息子ジョズ
エに「静かになるまで決して出て来るな」と言いつけて隠れさせた
ゴミ箱のようなところの隙間から、ジョズエがグイドを見る。する
と、彼は大行進よろしく、足と手をしっかり上げ下げし、楽しそう
に歩いてみせる。このシーンは、ビューティフルだ。

   音楽のコンサートでは、歌手がすばらしいパフォーマンスを見せ
観客を凍りつかせたときのことを「ショウ・ストッパー」と呼ぶ。
ショウを止めてしまう、凍らせてしまうパフォーマンスという意味
だ。映画では、さながら、そのようなシーンは「ムーヴィー・スト
ッパー」と呼ぶにふさわしい。グイドのこの行進のシーンは、まさ
に「ムーヴィー・ストッパー」だ。そして、同時に「時間よ、止ま
れ、シーン」でもある。

   こういうシーンは、それを見る人によって違うこともあるだろう
。僕にとっては、この作品ではたまたまそのシーンだが、別の人に
とっては、他のシーンが、「ムーヴィー・ストッパー」になるかも
しれない。

   この『ライフ・イズ・ビューティフル』は、僕にとっては、そん
な「ムーヴィー・ストッパー」、「時間よ、止まれシーン」のある
お気に入りの映画となった。


■映画『ライフ・イズ・ビューティフル』について


   舞台は、イタリア・トスカーナ地方。時代は1939年。小さな
本屋を開く夢を持ったグイド(ロベルト・ベニーニ)は、友人とと
もに叔父が住むアレッツォの街にやってくる。その道すがら、彼ら
はひとりの女性と出会う。アレッツォは、彼らが住んでいた街とは
比べものにならないほどの都会。見るもの出会うものが、すべて彼
らにとっては新鮮だった。そこで、グイドは、道すがら会った女性
と何度か偶然の再会を果たす。それは、小学校の教師ドーラ(ニコ
レッタ・ブラスキ)だった。

   グイドの本屋開店の計画は、開店の申請に行った役所でちょっと
したことから役人を怒らせてしまい、挫折。しかたなく、叔父の務
めるホテルでウェイターの仕事をするようになる。ここでグイドは
天性の明るさと客あしらいのうまさで客を引きつける。そんな客の
中に、ドイツ人医師でなぞなぞ好きのレッシングがいた。彼は自分
が解けないなぞなぞをグイドに出したりして仲良くなり、すっかり
グイドは気に入られる。

   ドーラのオペラ見物のあとに、グイドはうまくドーラを誘い出し
デート。グイドの純粋さとロマンチックな人柄が徐々にドーラの心
をつかみ始めた。だが、ドーラには、婚約者がいた。ホテルでその
婚約パーティーが開かれたとき、グイドは強引にドーラを連れ出し
ふたりはめでたく結ばれる。ここまでがおおまかに言って前半。

   後半は、その数年後、グイドは念願の本屋を持ち、ドーラとの間
に息子ジョズエをもうける。幸せな日々を送っていた彼らに時代の
影が静かに忍び寄る。

   ジョズエが5歳の誕生日を迎えた日、グイドとジョズエ、そして
、叔父がユダヤ人であったため強制収容所行きの列車に乗せられて
しまったのだ。ドーラは、ユダヤ人ではなかったため、連行を免れ
たが、彼女は自分の意志で、その列車に乗る決意をする。

   男女別に分けられた収容所。男の部屋に息子のジョズエと通され
たグイドは、そこで魂の抜け殻となった男たちが目的もなく、ただ
生きている姿を見て呆然とする。この状況を息子にどのように説明
すればいいか。その瞬間、彼は、自分たちがあるゲームに参加して
いるんだ、という作り話を思い付く。「泣いたり、ママに会いたが
ったり、オヤツを欲しがる者は負けだ。負けると家に帰されてしま
うが、勝って1000点獲得すると、本物の戦車がもらえるんだ」

   この話をドイツ兵の通訳になりすましたグイドに聞かされたジョ
ズエは、賞品の戦車を思い描き、目を輝かせる。

   「シャワーだ」  その声で、収容所の子供たちは、集められ、ガ
ス室に送られた。シャワー嫌いだったジョズエは、幸いに、そのガ
ス室行きを免れる。「誰にもみつからないように隠れていると点が
もらえる」と言われたジョズエは、父が重労働から帰って来るまで
じっと部屋の片隅で待ち続けた・・・。

   この『ライフ・イズ・ビューティフル』は、98年カンヌ国際映
画祭審査員グランプリ受賞、その他20以上の賞を獲得してきた話
題作である。『ニュー・シネマ・パラダイス』、『イル・ポスティ
ーノ』を生み出したイタリア映画界からまた名作が誕生した、とい
うキャッチは、言い得て妙である。

   何といっても、いつでも早口で何かをおしゃべりしているグイド
のその徹底的な明るさが、この映画を一見暗くなりそうな、テーマ
を実に爽やかなものにしている。笑いと涙があり、そして、タイト
ル通り、人生は素晴らしいということが心にしみる作品だ。


■映画のサウンド・トラック盤とニコラ・ピオヴァーニについて


   本作の音楽を担当したのは、ニコラ・ピオヴァーニ。ピオヴァー
ニは、1946年5月26日、イタリア・ローマ生まれ。幼少の頃
からピアノを学び、1967年にピアノの学位を獲得。その後、ア
ートと作曲を、ギリシャ人作曲家、マノス・ハイダキスの元で学ん
だ。1969年、シルヴァノ・アゴスティの『N.P.Il  Se
greto』を皮切りに、1970年、マルコ・ベロッキオの『N
el  Nome  Del  Padre(In  The  Name
Of  The  Father)』をてがけ、映画音楽を次々に制作
するようになる。

   以後、ベロッキオとのコンビが続き、『Marcia  Trio
nfale』、『Salto  Nel  Vuoto(Leap  I
nto  The  Void)』、『Matti  Da  Slega
re(Fit  To  Be  United)』などの音楽をてがけ
た。さらに、マリオ・モニセリの作品『Speriamo  Che
   Sia  Femmina(Let's  Hope  It's  A
   Girl)』、『Il  Male  Oscuro』、ナンニ・モ
レッティの作品『La  Messa  E'  Finita』、『P
alombella  Rossa』、『Caro  Diaro(D
ear  Diary)』、ギアスペ・トルナートレの作品『Il
Camorrista』、ギアスペ・ベルトリッチの作品『Seg
reti  Segreti』、ダニエル・ルチェッティの作品『D
omani  Accadra'』、ジャンフランコ・ミンゴジーの
作品『Flavia  La  Monaca  Musulmana(
The  Nun)』などの音楽を担当している。

   他に、タヴィアニ兄弟の作品『La  Notte  Di  San
   Lorenzo(The  Night  Of  Shooting
   Stars)(邦題、サン・ロレンツォの夜)』(82年)、『
Kaos(邦題、カオス/シチリア物語)』(84年)、『Goo
d  Morning  Babylon(邦題、グッド・モーニング
・バビロン!)』(87年)、『Il  Sole  Anche  D
i  Notte(Night  Sun)(邦題、太陽は夜も輝く)
』(90年)、『Fiorile(邦題、フィオリーレ  花月の伝
説)』(93年)、また、フェデリコ・フェリーニの作品『Gin
ger  E  Fred(邦題、ジンジャーとフレッド)』(85年
)(ダヴィッド・デ・ドナテッロ賞音楽賞を受賞)、『L'int
ervista(邦題、インテルビスタ)』(87年)、『LaV
oce  Della  Luna(Voice  Of  Moon)(
邦題、ボイス・オブ・ムーン)』(90年)の音楽も制作している
。

   映画音楽を精力的に制作する一方、テレビ番組の音楽や、劇場用
の音楽も作る。ミンゴジーの連続もの『Un  Treno  Per
   Instabul』を皮切りに、ルイージ・マグニの『Il  G
enerale』、ダミアーノ・ダミアーニの『Lenin  Th
e  Train』などをてがけた。

   彼の活動は、イタリアだけにとどまらず、ヨーロッパ全域におよ
び、多くのヨーロッパの監督とも仕事をしている。これまでに彼が
仕事をした監督には、ベン・ヴォン・ヴェルボーグ、バーナード・
ファーヴル、パル・ガボー、ドュサン・マカヴェジェス、ミシェル
・シブラ、ジーン・ジャック・アンドリエン、マロウン・バグダデ
ィ、ビガス・ルナ、ジョン・アーヴィンなどがいる。

   また、88年、ミュージカル『La  Cantata  Del
Fiore(Cantata  Of  Flower)』、90年に
『La  Cantata  Del  Buffo(Cantata
Of  The  Fool)』を、また、92年には、これまでに彼
が書いてきた映画音楽を集めたコンサート『Canti  Di  S
cena』を行なった。89年には、ミュージカル・コメディー『
I  Sette  Re  Di  Roma(The  Seven  K
ings  Of  Rome)』をてがけた。

   さらに、3本のチェンバー・ミュージックも制作。89年の『Q
uattro  Canti  Senza  Parole(Four
   Chants  Without  Words)』、90年に『I
l  Demone  Meschino』、92年に『Il  Vol
o  Di  Mare』の3本。

   まさにイタリア音楽界の重鎮ともいうべき活躍ぶりである。


■監督・主演ロベルト・ベニーニについて


   1952年10月27日、イタリア・トスカーナ地方、アレッツ
ォのミザルコルディアに生まれる。70年代初め、ローマに出て演
劇やスタンダップ・コメディアンとして活動を始めた。ジュゼッペ
・ベルトリッチ監督の『Berlinguer、  Ti  Vogl
io  Bene』(76年)で映画デビュー。79年ジュゼッペの
兄、ベルナルド・ベルトリッチ監督の『Luna(邦題、ルナ)』
にも出演。その後も、多数の映画に出演、82年『Tu  Mi  T
urbi』(4話オムニバスのコメディー)で監督デビューを果た
した。

   監督作品は、共同も含めて、『Non  Ci  Resta  Ch
e  Piangere』(84年、マッシモ・トロイージと共同監
督)、87年の『Jl  Piccola  Diavelo(邦題、
小さな悪魔)』(監督・主演)、92年『Johnny  Stec
chino(邦題、ジョニーの事情)』(監督・主演)、93年『
Il  Mostro』(監督・主演)がある。

   本作『La  Vita  E  Bella(英語題、Life  I
s  Beautiful、邦題、ライフ・イズ・ビューティフル)
』は、単独監督作品としては、93年以来のものとなる。
   俳優としては、80年代以降、フェリーニの遺作『La  Voc
e  Della  Luna(邦題、ボイス・オブ・ムーン)』(9
0年)でエキセントリックな詩人を、86年、ジム・ジャーミッシ
ュ監督の『Down  By  Law(邦題、ダウン・バイ・ロー)
』(3人の脱獄囚が、南部を逃げるロード・ムーヴィー。3人のう
ちのひとりを演じた)、さらに91年、同じくジム・ジャーミッシ
ュ監督の『Night  On  Earth(邦題、ナイト・オン・
ザ・プラネット)』などに出演。知名度をあげた。『ナイト・オン
・ザ・プラネット』は、ロス、ニューヨーク、パリ、ローマ、ヘル
シンキの各都市で起こる出来事を、タクシー運転手の目で描くが、
ベニーニは、ローマのタクシー運転手を演じた。さらに、『ナイト
・・・』に続き、93年、ドタバタのアメリカ・コメディー映画『
Son  Of  The  Pink  Panther(邦題、ピンク
・パンサーの息子)』に出演したことからも、評価が高まった。

   93年、単独監督作『Il  Mostro』は、平凡な主人公が
連続殺人犯とまちがえられるコメディーで、本国イタリアで爆発的
ヒットを記録。次回作は、クロード・ジディ監督の『Asteri
x  Et  Obelix  Contre  Cesar』(99年)
。

   スタンダップ・コメディー出身ということもあり、「イタリアの
ロビン・ウィリアムス」、ときには、監督もするため「イタリアの
チャーリー・チャップリン」などとも評される。その最大の魅力は
、やはり、笑いとやさしさと人間味あふれるキャラクターだ。


■本サウンド・トラック盤について


   本作は、この映画のサントラ。全編インストゥルメンタル。映画
を見た後、このCDを聴くと、映画の雰囲気が思いだされる。原盤
番号は、VIRGIN  ITALY  7234  8  45418
2  8。97年にイタリアでは映画公開にあわせて発売された。

   全編、ニコラ・ピオヴァーニの叙情的な美しいメロディーが響く
。全曲オーケストラのインストゥルメンタルということから、この
サントラ盤、テレビやラジオの番組製作者にとっては、このうえな
く重宝する一枚になりそうだ。

   これでこのニコラ・ピオヴァーニの『ライフ・イズ・ビューティ
フル』のアルバムはもうおしまい。いかがでしたか。このCDがあ
なたのCDライブラリーにおいて愛聴盤となることを願って・・・


[March 2、 1999: MASAHARU YOSHIOKA]
"AN EARLY BIRD NOTE"
"LINERNOTES SINCE 1975"
E MAIL: ebs@st.rim.or.jp



(2002年9月7日アップ)
    
MASAHARU YOSHIOKA
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