NO.425
2003/10/24 (Fri)
"Standing In The Shadows Of Motown": Motown's Sparkle & Shadow
光影。

う〜ん、ドキュメンタリーでこんなに感動するとは・・・。予想外の展開だった。そこにはアンサング・ヒーローたちそれぞれのドラマがあった。ドキュメンタリー映画『スタンディング・イン・ザ・シャドウズ・オブ・モータウン』だ。

この日記でも2002年12月2日付けで書いた。http://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/soul-diary-200212.html そのとき、日本では公開されないだろう、と書いたのだが、公開されることになった。シネカノンで2004年2月頃の公開が予定されている。そして、その字幕付き試写を見た。前に一度少しだけ書いたが、DVDを入手したものの、リージョンコード1のため、テレビにつけているDVDプレイヤーでは見られず、未見だった。ただパソコンでは見られたのだが、小さい画面で見るのもなんなんでほっておいたら、試写の案内がきたので喜び勇んで飛んでいった。

すべてはヒッツヴィルから始まった。ヒッツヴィルとは、モータウン・レコードの本社があったデトロイトのその建物の愛称だ。そのヒッツヴィルの建物は、実際に行ってみると郊外のどこにでもあるような何の変哲もない実に小さな一軒家である。60年代、ここでは昼夜問わずレコーディング・セッションが繰り広げられ、そこからは次々とアメリカを、世界を揺るがすヒット曲が生まれていった。

映画は「エルヴィス、ビーチボーイズ、ストーンズ、そして、ビートルズ。彼らが獲得したナンバーワンをすべて合計しても、彼らにはかなわない。だが、その彼らの名前を知るものはいない・・・」という字幕で始まる。彼らとは「ファンク・ブラザース」。60年代に大活躍したモータウン・レコードのすべてのヒット曲のバックをつけていたスタジオ・ミュージシャンたちのことだ。彼らがかかわった全米ナンバーワン・ソングの数は、確かに前述のアーティストたちの合計をも超えるだろう。しかし、彼らに脚光が浴びることはなかった。

この『スタンディング…』はそうしたアンサング・ヒーローへスポットをあて、彼らの物語を浮かび上がらせる。元はドクター・リックスが書いた同名の著作(全米では89年に発売)を映画化したもので、映画版もドクター・リックスが深くかかわっている。同本は『伝説のモータウン・ベース、ジェームス・ジェマーソン』(リットーミュージック)として日本でも96年に発売されている。この本で紹介されるエピソードなどが、登場する本人たちの生の声で語られる。そして、映画版の製作企画は89年から始まり13年の期間を経て完成をみた。実際の撮影は2000年冬に約6週間で行われ、2002年11月に公開された。

その中心は伝説のベース奏者ジェームス・ジェマーソン。天才ベース奏者の破天荒な生き様が仲間のミュージシャンたちに、面白おかしく、ときに悲しく語られる。そのエピソードの豊潤なこと。彼のベースには「命」が吹き込まれているんだという息子ジェームス・ジェマーソン・ジュニアの説明には実に納得した。

映画の前半は少々ゆったりしたところがあるが、後半は一気にくる。ギタリストで故人となったロバート・ホワイト、彼についてドクター・リックスが語る。「私がロバートと(LAで)レストランに入った時のことだ。ちょうどその時、『マイ・ガール』(テンプテーションズの大ヒット。あの有名なイントロのギター・リフはこのロバートが作り、プレイしたものだ)がかかった。彼はちょうどそこにいた給仕に『なあ、この曲・・・』と言いかけて、止めてしまった。私は訊いた。『どうした、何を言おうとしたんだ』 彼は言ったよ。『この曲のギターはオレが作ったんだ、と言おうと思ったが、どうせ、そんなことを言ってもおいぼれのたわ言にしか聞こえないだろうと思って、言うのを止めたんだ』」 世界中の誰もが知っているであろうあのギターリフの作者のそのときの気持ちはいくばくのものか。彼もまたスポットの当たらなかったアンサング・ヒーローのひとりだ。思わずぐっときた。

様々なエピソードが実におもしろい。初めて知った話もいくつもある。マイケル・ジャクソンが「ムーンウォーク」を初めて世界に披露したことで有名になったモータウン・レコードの創立25周年イヴェント『モータウン25』の会場に、ジェームス・ジェマーソンは人知れずチケットを買って、入場していた。

このドキュメンタリーでは若干の再現シーンもある。また、最近のアーティストたちが現存するファンク・ブラザースをバックに彼らの代表曲を歌うシーンがいくつかでてくる。その模様は、CD盤のサウンドトラックでも聴ける。http://www.allmusic.com/cg/amg.dll?p=amg&uid=CASS80305190557&sql=Ao1r67ub030jf 

マーキー(ライヴハウスなどで歩道につきでている看板)に「FUNK BROTHERS」の文字が浮かび上がっている。今夜は彼らが今のシンガーたちとともにライヴをする特別な日だ。イントロで、ファンク・ブラザースの面々がひとりひとりMCに紹介されてステージに登場する。そのとき、彼らはすでに故人となったメンバーの写真を持って、椅子に立てかけていく。こうして舞台には今も現役で活躍する老齢なファンク・ブラザースの面々と故人となったメンバーが勢ぞろいする。そして、そのファンク・ブラザースをバックにシャカ・カーンとモンテル・ジョーダンが「エイント・ノー・マウンテン・ハイ・イナフ」を歌う。マーヴィンとタミー・テレルで、さらにダイアナ・ロスでも大ヒットになった名曲である。このシーンにもこみあげるものがあった。

実にいいインタヴューぶりを見せていたミッシェル・ウンデゲオチェロが声をかぶせる。「ヒッツヴィルは、結局、建物ではなかったのです。ヒッツヴィルはその中にいる人々だったのです」 その通り! すばらしい締めの言葉だ。

誰もがスティーヴィー・ワンダーを知っている。マーヴィン・ゲイを知っている。ダイアナ・ロスを知っている。テンプテーションズを知っている。フォー・トップスを知っている。だが、彼らファンク・ブラザースを知っている人はほとんどいない。それは音楽に潜む光と影だ。そして、この映画は正にその「影」に「光」を与えたのである。

これは、絶対にたくさんの人に広めないといけないと思った。ソウル好きの人、モータウンの音楽で育った人は必見です。

ENTERTAINMENT>MOVIE>Standing In The Shadows Of Motown

映画『モータウン(仮題)』(シネカノンで2004年2月公開予定)

タイトル・モータウンの光と影


Diary Archives by MASAHARU YOSHIOKA
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