Hell For Men Turns Heaven For Him

地獄。

金曜夜7時、西麻布のシカダ(Cicada)。友人夫婦らと会食。ここは、しいていえば地中海沿岸の料理ということで、かなりヨーロッパ色が強い。スペイン風タパスから、ギリシャ風料理などいろいろでてくるが、金曜の夜のせいか広い店内も超満員になっている。最近はなかなか予約が取れないらしい。昔は洋服屋さんがやっていたイタリアンだったところだ。インドのナンのようなパンがちょっと塩気が効いていておいしい。

で、その夫婦はつい先ごろ結婚式をあげたばかりなのだが、そのなれそめやら、どこで気持ちが傾いたかなどという、まあ、新婚さんにありきたりな話がどんどん飛び出すわけである。彼はひじょうにやさしい、知的で物静かな男性だ。彼はイギリス人で彼女は日本人。彼女はどちらかというと彼を尻に敷きそうなタイプ。(笑) 

そんな数ある話の中で、知り合ってお互いメールのやりとりをするようになって、ひとつえらく彼女が受けたメールがあったという話がおもしろい。彼はイギリス人ながら日本語でメールが書ける。漢字もだ。日本に初めて来たのは20年近く前になる。

二人が知り合って、まもなく彼がイタリアへ出張となった。そこで、おみやげに何がいいか、という話になった。ところが、彼女はまだ知り合って一月も経っていなかったので、遠慮して欲しいものをはっきり言わなかった。そこで、彼は彼なりにいろいろ考えてみたのだが、知り合ってまもないから彼女の趣味など皆目わからない。何日かショッピングを試みたがギヴアップしてメールを送った。そのタイトルは—。

「男の地獄」! 英語では、Hell For Men。男が女性へのプレゼントを選ぶのは、地獄だあ、ということだ。彼女は最初、こんなタイトルが来て、一体なんのことかと思ったのだが、結局、その男の地獄をかわいそうだと思い、トッズ(Tod’s)の靴が欲しいな、とメールを送った。ところが、日本の靴のサイズとイタリアのサイズでは表示も違うし、同じだとしてもさらにブランドによって違うこともある。そこで、彼女は渋谷の西武に行って、わざわざ、そこでは買わないのに(笑)サイズだけ計りにトッズで試着したのだ。彼女がそのとき試したのは、ローファーだった。そして、そこで計ったサイズをメールで送った。

何日か後、彼がイタリアから戻りおみやげを手渡した。大きな包みを開けると、そこにはトッズのローファーではなく、ブーツが入っていたのだ。彼女はそれがローファーではなくブーツだったことで、またびっくり。果たして足が入るか試したが、無事入り、めでたしめでたし、となった。確かに男性にとって、女性へのプレゼントを買うのは地獄かもしれない。(笑) 

とはいうものの、Hell For Menは、確かに「男の地獄」ではあるが、ニュアンスを付け加えれば、「男にとっての地獄」って感じだろうか。しかし、メールのタイトルが漢字で「男の地獄」だったら、そりゃあ、インパクト強い。

エアコンはついているがドアは開け放され、ときおり、地中海通りから風がはいってくる満員の店内はその話し声でかなりうるさい。隣のテーブルは12人の外国人のグループだ。他にも外国人のお客さんが多い。シェフが外国人だからか。

そして、彼らは付き合い始めるのだが、その後こんな泥酔事件が起こる。友人たちと飲んでいたときのこと。たまたまそこには日本酒と焼酎しかなかった。彼女が珍しく焼酎を飲んだら、かなりよっぱらってしまい、記憶がなくなるほどになった。彼のところに帰る途中、気持ち悪くなって戻してしまったが、戻ってもまだすっきりしなかった。そして、頭もがんがんする中、寝てしまう。朝、ふと気が付くと、自分はパジャマを着ていて、鏡を見ると化粧も落ちていた。

彼女は尋ねた。「昨日の夜、一体どうしたの、私?」 すると彼は答えた。「寝ちゃってたから、パジャマに着替えさせて、それから、顔の化粧をタオルで拭いて取ったんですよ」 おおおおっ。着替えさせて寝かせつけるあたりまでは思いつくが、化粧を取るところまで気が回る男性はいるだろうか。う~~~ん、なかなかやるな!(笑) 

そして、この事件を機に、彼女の気持ちは彼の方へ徐々に傾いていて行ったという。まさにターニングポイントだった。

この話から得る教訓は、こうだ。彼女が酔って寝てしまったら、化粧を落とせ。(ちがうか)(笑) 男の地獄を経験したからこそ、今の天国のような幸せがあるということである。(笑) 「男の地獄、転じて天国となる」ってところだろうか。ご結婚、おめでとうございます。まちがっても「天国転じて地獄に」ならないようにね。ははは。(笑) 

あ、そうそう、「尻にしく」って英語でなんていうのだろうか。彼にきいた。「あ、それはちょっと違うけど、英語ではこう言います。She wears the trouser. 彼女は(彼の)ズボンを穿く、っていうこと」 この表現は「ボス的存在になる」ことを意味する。な~~~るほどね。ワンポイント・イングリッシュ・レッスンでした。

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