Joss Stone / The Soul Sessions: The Soul Is Here To Stay

成熟。

今年は2004年である。だが、今ここで聴いているCDは、あたかも70年代に存在していたかのようなソウルのレコードだ。しかも、南部の香りがするレディー・ソウル。ちょっとディープソウルと言ってもいい。一体誰のCDかといえば、ジョス・ストーンという新人のデビュー・アルバム『ジョス・ストーン/ザ・ソウル・セッションズ』(東芝EMI)である。

この驚異的な新人については、その出会いをちらっと書いた。https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200309/diary20030922.html あれから4ヶ月。じっくりとアルバムを聴いている。日本盤が1月16日にでる。

何より驚くのが、この成熟した歌声だ。オーティス・レディングの早熟さ、ジャニス・ジョプリンのディープさ、アレサ・フランクリンのエモーショナルさを兼ね備えたシンガー。そして、彼女は1987年4月11日生まれのまだ16歳。今年の4月でやっと17歳。高校生で言えば2年生だ。さらに、彼女はイギリス出身の白人である。音楽を肌の色で聴く必要はないが、それでもこれは白人ばなれした、黒人のような声だ。とんでもない才能がでてきたものだ。

こんなアルバムを作り出したのは、なんとマイアミのベティー・ライト。このジョスを見出したSカーヴレコードのスティーヴン・グリーンバーグという社長が、彼女の作品をベティー・ライトにプロデュースしてほしいと考えたところからこのプロジェクトが進んだ。元々、ジョスと契約しオリジナルアルバムの制作になるところだったが、途中で一曲吹き込んだソウルのカヴァー(カーラ・トーマスの「アイヴ・フォーリン・イン・ラヴ・ウィズ・ユー」)の出来がすばらしかったので、そうした作品ばかりを録音しよう、ということになり、急遽完成したのがこのアルバムだ。

全曲ソウルのカヴァー集。しかも、選曲が実にマニア好み。もうたまらない。いきなり、ジョー・サイモンの「チョーキン・カインド」と来た! さらに2曲目はシュガー・ビリーの「スーパー・デューパー・ラヴ」だ! 日本盤でてません。輸入盤で当時よく売れました。先週、偶然武蔵小山のゲッコーで聴きました。こんな曲、普通誰も知らない。

なぜこんな『フィールン・ソウル・新春放談』並みのマニア度の高いアルバムができたかというと、これをてがけたそのスティーヴン・グリーンバーグという人物ゆえだ。彼は、なんとこれまでにスタックスのあのボックスセット(膨大な仕事だ)、シュガーヒル・レーベルのボックスなどをてがけてきたいわば筋金入りの「ソウル、R&B研究家」なのだ。彼が一般市場のことなどまったく考えずに、ほぼ完全に自分たちの趣味でいい音楽を作ろうとして作った作品と言っても過言ではない。

そして、やはりこれまた驚嘆するが、全曲、ジョス・ストーンが生まれる前の作品、ヒット曲なのである。しかし、彼女の出身地、属性など、そんなことを知らずとも、このソウルあふれるアルバムは、すばらしい。まさに、ソウルはここにあり。はやくも今年上半期ベスト3間違いなしのソウルアルバムだ。

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次回(2004年1月18日)『山野ミュージックジャム』(毎週日曜日、インターFM76.1MHZ、午後4時半から)で、このジョス・ストーンをご紹介します。

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