◎映画『プレシャス~小説「プッシュ」を元に~』

◎映画『プレシャス~小説「プッシュ」を元に~』
【Movie Precious: Based On The Novel Push By Sapphire】
プッシュ。
昨日『ソウル・ブレンズ』内「ソウル・サーチン」でご紹介した映画『プレシャス』。新装発売となった文庫本もアマゾンで注文したら翌日に届いて、たらたら読んでいるが、そのあたりも含めて話をするために、いろいろ調べていたら、前回の映画評のところでは書ききれていないことがたくさんあるので、追記したい。
まず、おもしろいのが、この映画の原作本となった『プッシュ』を書いたサファイアー(1950年生まれ)も、監督のリー・ダニエルズ(1959年生まれ)も、ともに黒人であり、同性愛者ということだった。どちらもカミングアウトしており、リーにいたってはパートナーと2人の子供を養子に向かえ育てている、という。
原題『プッシュ』が、映画では『プレシャス』になったのは、同時期公開の映画に『プッシュ』というタイトルのものがあったので混同を避けるために、こちらは、『プレシャス~サファイアーの小説「プッシュ」に基づく』となった。
原題の「プッシュ(押す=push)」という単語は、映画の主人公プレシャスの16年の人生の大きなキーワードになっている。文庫本の訳者解説で、東江一紀(あがりえ・かずき)さんが、その単語の3つの使い方について解説をしていて、なるほどと納得した。
プッシュという単語自体さまざまな意味を持つが、この映画では、1)プレシャスが子供を産むときに周りから言われる「プッシュ」。この場合「いきめ」「赤ん坊を押し出せ」といった意味。2)プレシャスがいわゆる代替学校(オルタナティヴ・スクール=公立校を追い出された生徒が通うフリースクール)に初めて行くときそのビルのエレヴェーターに乗って19階のボタンを押すときの「プッシュ」。まさにボタンを押すの、押す。3)プレシャスがその代替学校のレイン先生(ポーラ・パットン)の授業の中で、文集に寄せる作文を書けと言われるもののなかなか書けずに悩んでいるとき、そのレイン先生から「がんばって、ふんばって、自分のクリエイティヴを押し出して」と言われるときの「プッシュ」。と、3つのプッシュがそれぞれ違った場面で、しかし、彼女の人生の中でひじょうに象徴的に使われる。小説のタイトルが「プッシュ」となったことがよくわかるシーンだ。
この原作本は、ひじょうにおもしろい。冒頭のところは、主人公が文字の読み書きができないということで、おぼつかない英語だったのだろう。日本語では、おぼつかない日本語が、ほとんどすべてひらがなで書かれているのだ。ページをめくるごとにだんだん漢字が増えていく。これは、なかなかのアイデアだ。
作家のサファイアーも、ハーレムでこの代替学校で教師をしていたことがある、という。そこで、何人ものプレシャスのような子供たちを見てきた。そうしたたくさんのプレシャスを見たことで、この小説を書いた。
今回の映画のサントラは、メアリー・J・ブライジがエグゼクティヴ・プロデューサーになっていて、「アイ・キャン・シー・イン・カラー」という曲を書き下ろしている。ただ、映画ではブライジのアルバム『ノー・モア・ドラマ』に収録されている「デスティニー」という曲が使われる。これが、まさにプレシャスのために書かれたのではないかというほどはまる。なぜ、これもサントラにいれなかったのかな。
当初ソーシャル・ウォーカーの役はヘレン・ミレンが演じることになっていたが、最後に出演を辞退したために急遽、マライア・キャリーにその役が回ってきた。ノーメークのマライアが実にいい雰囲気をだしている。そして、最大の演技賞は母親役のモニーク。元々コメディエンヌで、ラジオのDJなどもしていたモニーク。これを機にハリウッドからも大注目されるだろう。また、それまでも何人もプレシャス役の候補がいたが、監督たちを満足させられなかった。主役を射止めたガボーレ・シディベーは、月曜日にオーディションに出て、水曜日にはその役を獲得した。そのエピソードは、オプラ・ウィンフリーがアカデミーの授賞式のスピーチでも語っていた。
さて、読んでから観るか、観てから読むか。
■ 映画『プレシャス』~2010年4月24日(土)ロードショー
日比谷東宝映画街トーホー・シネマズシャンテ、渋谷シネマライズなど
公式サイト
http://www.precious-movie.net/
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2010年04月14日(水)
映画『プレシャス』~16歳プレシャスの運命は~今年のブラック・ムーヴィーの傑作
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-10507635447.html
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■『プレシャス』サウンドトラック盤

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One Response to ◎映画『プレシャス~小説「プッシュ」を元に~』

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    文庫本!って存在を忘れてました!
    私も今読んでます。