⊿『ソウル・ディープ』にアリシアは入らず。21世紀のブラック・ミュージックは、アリシア・キーズの

⊿『ソウル・ディープ』にアリシアは入らず。21世紀のブラック・ミュージックは、アリシア・キーズのようなジャンルレスなアーティストが台頭か
【Alicia Keys: Artist Belongs To Any Genre, Beyond The Category】
ジャンル。
昨日の『ソウル・ブレンズ』でアリシア・キーズの新作『エレメント・オブ・フリーダム』を紹介した。その中で、アリシアの母はイタリア系を先祖に持つスコティッシュ、アイリッシュ、父がアフリカン・アメリカン、ということを紹介したのだが、1981年生まれの彼女にとって、マイケル・ジャクソンでさえ『スリラー』(1982年)など、後追いで知ることになる。
すでに、彼女が物心付くころから、音楽ジャンルを意識することなどなかったのだろう。しかし、それでも彼女は自分のルーツとして、ジェームス・ブラウンやスティーヴィー・ワンダー、ダニー・ハザウェイ、アレサ・フランクリンなどのオールド・スクールのソウル・ミュージシャンに敬意を払ってきた。
彼女にせよ、ビヨンセ(1981年)にせよ、後期マイケル・ジャクソンなど、従来のソウル・ミュージックという概念からは、充分に飛び出ている。
土曜日までの音楽ドキュメンタリー番組『ディープ・ソウル』は、タイトル通り、「ソウル・ミュージック」に特化してその歴史をなぞった。たぶん、制作者は、わざと意図的にマイケル・ジャクソンやジャネット、プリンスをはずし、ホイットニーは白人受けを狙ったという位置づけにしたのだろう。多分狭義の意味合いでの「ソウル・ミュージック」から外れるということで、そうしたアーティストを外したのだ。その気持ちもわからないでもないのだが…。
しかし、アフリカン・アメリカンたちが作り出してきたブラック・ミュージックの過去60年余の歴史を振り返り、俯瞰的にドキュメントしようとするのであれば、昨日のブログにも書いたが、マイケル、プリンス、ホイットニー、ルーサー、そして、今だったらこうしたアリシア、ビヨンセなどを正しく理解し、解説し、記録しなければならない。
たぶんざっくりした感触だと、1990年代以降に出てくるブラック系ミュージシャンらは、特にジャンルレスになる傾向が強くなっている。そういう意味で、21世紀のソウル・ミュージックは、従来であればソウル・ミュージシャンと呼ばれた人たちが、ひとつの「ソウル・ミュージック」というジャンル、枠組みを飛び出し始めた時代、と捉えるのが一番当たっているのではないかと思う。
仮にこの番組のように、黒人対白人という対立軸の文脈で見るなら、僕はマイケルが『スリラー』あたりでやりだしたことは、それまではブラック・ミュージックというのは、白人たちに「搾取(さくしゅ)される」ことの連続だったのに対し、初めて黒人側が白人音楽を「搾取」したのではないか、と思った。おもしろい象徴的なエピソードは、レイ・パーカーがヒューイ・ルイスの作品を盗作して訴えられたことなどがある。あれなどまさに白黒逆転した事件だった。
また、『ソウル・ディープ』の最終回は、あまりに時代が現代すぎて、制作者たちも、過去の歴史に関する文献、評価などは充分にリサーチできても、新しいものだけにまだ評価が固まっていない、また、俯瞰した文献がないなどから、試行錯誤で迷いながら作ったのだろうと思えた。
それにしても、『ソウル・ディープ』という番組は、いろいろと考えさせてもらういい機会を与えてくれた。改めて感謝。
■アリシア・キーズの最新作『エレメント・オブ・フリーダム』(DVD付き)(前3作まではすべて全米1位になったが、これはならず。彼女のダークな心模様が、一般受けしなかったのか…。しかし、シンガーソングライターの作品としては、じっくり聴くと、彼女の鼓動が聴こえてくる。歌詞、あるいは訳詞などをじっくり読みながら鑑賞がお勧め)

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(ヒップ・ホップ・シーンの冷静な分析)

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ENT>DOCUMENTARY>Deep Soul
ENT>ARTIST>Keys, Alicia

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