●「煙が目にしみる」~名曲の起承転結

●「煙が目にしみる」~名曲の起承転結
(前日のブログの続き)
【The Meaning Of “Smoke Gets In Your Eyes”】
スタンダード。
土曜日深夜、翌日ラジオのコーナーで紹介するバーブラ・ストライサンドの新作『ラヴ・イズ・ジ・アンサー』(メッセージはマイケルと同じだ)の収録曲のひとつ「煙が目にしみる」を訳詞付きでお送りしようと、必死に訳詞にとりかかっていた。この20行弱の歌詞に、見事に物語の起承転結があるのだが、訳してみて改めて、昔の曲はうまくできているなあ、などと感心しきりだった。
このSmoke gets in your eyesは直訳だと、煙があなたの目に入る、ということになるが、「煙が目にしみる」という邦題も秀逸だ。これはもともとは、1933年のミュージカル作品『ロバータ』のためにジェローム・カーン(作曲)、オットー・ハーバック(作詞)によって書かれた作品。『ロバータ』は、女性作家アリス・デュアー・ミラー(1874-1942)が1933年に書いた小説『ガウンズ・バイ・ロバータ』を元にしたもので、劇場で300回近く公演されるヒットとなった。これを受け、1935年同作品がフレッド・アステア、ジンジャー・ロジャースらの主演で映画化されるが、この作品中もっとも人気を集めた楽曲がこの「煙が目にしみる」となった。それ以来多数のカヴァー・ヴァージョンが生まれた。1958年のプラターズのヴァージョンは全米ナンバーワンになり、大変よく知られるようになったが、ほかにも、ナット・キング・コール、ダイナ・ワシントンなども有名。
ハーバックは、ロシアの格言「When your heart’s on fire, smoke gets in your eyes,」(あなたの恋の炎が燃え上がる時、煙があなたの目を直撃する)からヒントを得て、この曲の歌詞を作った、という。
そして、訳詞をちーちゃん(=しのきちさと=『ソウル・ブレンズ』のDJのひとり)に読んでもらうときのBGMを探す。多数のカヴァーがある「煙が目にしみる」なので、すぐにインスト物など見つかるかと思いきや、なかなかインストがなく、やっと探し当てたのが、ハンク・ジョーンズのピアノをフィーチャーしたザ・グレイト・ジャズ・トリオのヴァージョン。
日曜午後2時。東京FMの『サンデイ・ソングブック』をつけると、なんと達郎さんがど頭1曲目で達郎さんヴァージョンの「煙が目にしみる」をプレイ! これにはさすがにびっくり。前夜遅くまで何度も聴きながら、英詞と日本語詞を煮詰めていたので、達郎さんヴァージョンも感無量だった。
そして、午後4時半過ぎ。BGMから静かにちーちゃんが、見事な朗読を聴かせてくれた。DJマーヴィンがそれを聴いて、「バーブラが日本に来て歌うときには、その歌の前に、ちーちゃんが詞を朗読すればいい」とまで言う。ちーちゃん、朗読うまい。前回読んでもらったのは、「スターダスト」だった。スタンダード曲には訳詞朗読があっている。
SMOKE GETS IN YOUR EYES
(Jerome Kern / Otto Harback)
BARBRA STREISAND
They asked me how I knew
My true love was true
Oh, I of course replied
Something here inside cannot be denied
私の愛が本物だったか、
みな不思議がるの
もちろんこう答える
私の燃えたぎる恋の炎は、絶対だったのよ
They said someday you’ll find
All who love are blind
Oh, when your heart’s on fire
You must realize
Smoke gets in your eyes
誰もが「愛は盲目だと、いつかはわかる」と言う
友が忠告してくれた
「恋の炎が燃えているときは、
煙が目にしみて、目が曇るものよ」と
So I laughed and I gaily laughed
To think they could doubt my love
Yet today my love has flown away
I am without my love
私は、この愛を疑っていた友たちを、あざけり笑った
でも、今日、その愛はどこかへ消えてしまった
もはや、私は愛のないもぬけの殻
Now laughing friends deride
Tears I can not hide
Oh, so I smile and say
When a lovely flame dies
Smoke gets in your eyes
Smoke gets in your eyes
今、涙が頬をつたう私を笑うのは、その友たち
だから私は作り笑いをして言い返す
「恋の炎が消えたときも、
煙が目にしみるのよ」と
(訳詞ソウルサーチャー)
+++
解説するのもヤボだが、一番の「煙が目にしみる」のは、恋は盲目、とにかく好きで嬉しくて涙が出てしまうほどという情景。一方二番の「煙が目にしみる」は、失恋し悲しくてその煙で涙が出るというまるで逆のシーンを描く。確かに炎が消えるときにも残り煙というか、そんなものが出る。また、涙を隠すものとしては、煙のほかに、雨もある。ドラマティックスの「イン・ザ・レイン」は、失恋で悲しくて泣いているが、雨の中にいるから、涙を隠せるといういじらしいシーンを描くが、この「煙が目にしみる」もそんな感じだ。
個人的には、I am without my loveを「私は愛のないもぬけの殻」とした部分、また、so I smile and sayを「作り笑い」に置き換えることができた部分が気に入っている。(少し自画自賛)
僕もこれまでこの「煙が目にしみる」って、タバコの煙かと思っていたが、どうやらタバコではないようだ。恋の炎から立ち上がる煙、煙は涙を隠すメタファーということだ。それにしても、この20行弱でのこの起承転結はすごい。物語がちゃんと成り立っている。
また、この歌詞は、今回はバーブラが歌ったので、「女目線」だが、当然、プラターズやナット・キング・コールが歌えば、「男目線」になる。この曲を聴く側が女性か男性かでまた、受け取り方が大幅にちがってくる。
この朗読を聴いたリスナー(女性)から、「今まで、この曲のこと何も考えずにけっこう好きでしたが、訳詞を聞いてみると、こういう恋愛はしたくない、共感できない曲だなあと思って(曲に対して)冷めてしまいました。まあ、男性が歌ったほうが、『それは残念、次の恋に進みましょう』という前向きな感じがするかもしれません。女性が歌うとなんかイジイジします」といった意見をいただいた。たかが「煙が目にしみる」、されど「煙が目にしみる」。奥が深い。ディスカッション・フォーラムのスレッドが立ち上がっても不思議ではない。
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ダイナ・ワシントンのヴァージョンもよいです

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一番有名なプラターズも、一応

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BGMで使ったハンク・ジョーンズ率いるザ・グレイト・ジャズ・トリオのアルバム

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2 Responses to ●「煙が目にしみる」~名曲の起承転結

  1. tea for two says:

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    あまりにも有名な曲すぎて、こんな意味だったとは知りませんでした。
    でも、もっと好きになりました。ますます沁みますね。歳のせいかな(笑)。どちらの「煙が目にしみる」も真実。でもそれは悪いことじゃない。そして煙は全てを包み込んでくれるもの・・・。バーブラ版聴いてみたいです。

  2. cova says:

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    番組中にも言及していましたが、サプライズゲストとして登場した11/27(金)のコンサートではフルオーケストラヴァージョンを聴くことができました。言葉ではうまく表現できませんが、感動のあまり、聴き終わった後もしばらく鳥肌が立っていました。