"Good Night, and Good Luck"

【映画『グッドナイト・アンド・グッド・ラック』】

グッドラック。
1950年代、テレビ・ジャーナリズムがまだ確立していない時期に、堂々と真っ当なテレビ・ジャーナリズムの志を持ち、自ら体現していったCBSテレビのニュース・キャスター、エド・マローとそのチームの物語。当時、共産主義者を告発する「赤狩り」がマッカーシー上院議員によって強引に行われていた。「赤狩り」に反対することは、イコール共産主義者のレッテルを張られるに等しいほどの状況だった。しかし、マッカーシーのやり方は、民主主義とは相容れないものだった。多くのメジャー・テレビ・ネットワークや新聞なども報復を恐れて、マッカーシー叩きをしていなかった。そこにジャーナリズムの自由と正義をかけてエド・マローたちが、立ち上がった。
今年のアカデミーで6部門にノミネートされた話題作。ジョージ・クルーニーが出演、監督、製作も兼ねている。
全編モノクロで、ドキュメントのアーカイブ映像も織り交ぜながら、淡々とマローたちとマッカーシーとの対決を描く。もちろん、その周辺にはスポンサーとの確執、視聴率と制作費の問題などの現実的な生臭い話がちりばめられる。このあたりの話は50年後の現在にも、そのまま当てはまる。
テーマもひじょうに興味があり、また、映画の中でダイアン・リーヴスが歌を聴かせるシーンがあると聞いていたので、ひじょうに期待していた。実際、彼女は50年代風のジャズシンガーで実によかった。
僕が驚いたのは、あの頃の人たちっていうのは本当に皆へヴィースモーカーなんだな、ということ。キャスターが煙草を吸いながら、生放送をしているところなんて、今ではあり得ない感じ。そして、煙草メーカーが堂々とスポンサーになっていた。エドの立ち振る舞いを見ていて、ドナルド・フェイゲンの『ナイトフライト』とのジャケットを思い浮かべた。
対マッカーシーとの戦いには勝利するものの、CBS内では番組は打ち切られてしまう。このあたりのやるせなさは、実にいい味をだしていた。全体的には地味な印象を持ったが、こうした地味な演出でこれだけのストーリーを描くのだから、ジョージ・クルーニーの監督としての力量は見事だ。地味だがとてもいい映画だ。
エドは、ラジオ時代に『ヒア・イット・ナウ』というドキュメンタリーを作っていた。そして、テレビ時代になり、『シー・イット・ナウ』を作り、この番組の中でマッカーシーを取り上げる。
映画タイトルの『グッドナイト・アンド・グッド・ラック』は、エド・マローが毎回番組の終わりで必ず言う一言だった。こういう締めの言葉って実にかっこいい。
しかし、エド・マローはあのヘヴィー・スモーキングがたたってか、肺がんになり、さらには脳腫瘍の手術も受け、57歳の若さで亡くなる。Good Night, And Good Luck!
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