Like The Show Must Go On, The Story Must Go On (Part 1 of 2 Parts)

【シックの「グッド・タイムス」が結ぶ点と線】

検索。

物語に終わりはない。物語は続く。夢に限りはない。夢は持ち続ける者にこそ叶う。

僕は『ソウル・サーチン』を2000年6月に書き上げた。7組のアーティストの栄光と挫折を描いた物語だ。その前書きでこう書いた。

「ここではたまたまミュージシャン七組をとりあげているが、『ソウル・サーチン』をするのは、別にミュージシャンに限ったことではない。エンタテイナーであれ、スポーツ選手であれ、起業家であれ、あるいはまったく無名のひとりの市民でもいいのだ。この本にインスパイアーされて、次の『ソウル・サーチン』の主人公となるのは、あなたかもしれないのだ。もし本書がそんなあなた自身のソウル・サーチンの手助けになれば、筆者としてはこれほどの喜びはない。」

そんな続きを描いてくれそうな人が登場した。1979年夏、アメリカにいっていたひとりの学生がシックの「グッドタイムス」を聴いていた。84年その彼は再び一年間留学のためにアメリカに渡っていた。その後外資系金融関係の仕事をしていた彼は、2003年4月18日、たまたま前日にJウェイヴのラジオ番組『ソウル・トレイン』で、シックがブルーノートに来ていると聞き、ブルーノートを訪れた。

その日は、シックのナイル・ロジャースにとっても特別な感情の混ざる日だった。相棒のバーナード・エドワーズ7回目の命日だったのである。バーナードは、7年前の同じ日、ここ東京で亡くなっていた。ナイルは、「グッド・タイムス」をアンコールで演奏した。それを聴きながら彼も、79年の夏を、そして、それからの24年間の自らの人生をかみしめていた。彼は自身の人生の転機を感じ取った。

彼はグッドタイムス、グッドミュージックをひとつのビジネスにまとめたいと思った。夢はどんどん膨らんだ。いつの日か、おいしい食事ができ、グッドミュージックが流れるような店をやりたい。店の名前は密かに決めていた。「グッド・タイムス」だ。そして、その柿落とし(こけらおとし)にはぜひナイル・ロジャースに来て演奏してもらいたい。今は、夢の夢だ。そして、その実現のためには何段階もステップが必要だということもわかっている。

シックをブルーノートで見てからほぼ1年で彼は田園都市線沿線・あざみ野におしゃれなピッツェリアをオープンした。そのホームページを作り、オープンまでの物語を自ら見事な筆致で描いた。そして、その中で「ソウル・サーチンのシックの項」にリンクを張っていた。ピッツェリアの名前はマルターノ。オウナーの名は大西さん。

先日、僕はたまたま自著『ソウル・サーチン』をインターネットで検索していた。出版社にも在庫はなくなり、増刷もしないという決定を聞いており、しかし欲しい人はいるので、中古で買えるなら自分で買っておこうというつもりだったのだ。以前も一冊、友人に中古を紹介したことがあった。そして、その検索過程で、驚いたことにこの中古本が定価より高く販売されていることを知った。評価されていることは嬉しいというか、しかし、定価より高くというのはあまり嬉しくはなく複雑な心境だ。これは、早いところ文庫化しなければ、と思っていた。そんな中で、偶然僕はこのマルターノのウェッブに出会った。

マルターノのウェッブ・トップページ
http://www.martano.jp/

ここに「マップ」、「ブログ」などともにストーリーという項があり、僕はそこをクリックして読み始めた。ストーリーのトップにはシックのアルバムジャケットが飾られていていやがおうでも興味を誘われた。

マルターノ・ストーリーの1ページ目。10ページまである。
http://www.martano.jp/story/1.html

それは79年、この物語の主人公オオニシが短期留学しているところから始まる。79年から84年、90年、96年、そして2003年と時系列に沿った見事なストーリーで思わず全部を一気に読んでしまった。興味深かったので文字数を勘定すると、13000字以上(400字詰原稿用紙にすれば40枚近くになる)もある大作だ。(興味ある方はぜひ、そちらを先にお読みください)

僕がまずやられたのは、オオニシとエンツォ・マルターノが出会うシーン。マルターノは、オオニシに「俺は一人でピッツァを喰う奴が好きなんだ。」と言う。まるでアメリカ映画のようではないか。そして、紆余曲折あって彼がブルーノートに磁石に吸い寄せられるように向かう。

シックの「グッド・タイムス」は大西さんにとっては、タイムカプセルを開けるきっかけとなった。そして、僕にとっては「ソウル・サーチン:シック~友情という名のメロディー~ 」を書くために何度も何度も聞いた曲でもあった。大ヒット曲は、聞く人それぞれに思い入れや思い出が宿るものだ。大西さんにとっての「グッド・タイムス」という点と、僕の「グッド・タイムス」という点が線になって交差したような気がした。

この物語を深夜に読み終えて、僕はこのお店に行ってみたい、この人に会うしかないと思った。そして、翌日、夕方仕事を終えてから、あざみ野に向かうことにしたのだ。

(パート2へ続く)

■ソウル・サーチン:第4話: シック~友情という名のメロディー~
https://www.soulsearchin.com/soulsearchin/4-1.html

ENT>MUSIC>STORY>Chic

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