The Last Chapter Of Life: Jimmy Scott Live

【人生の最終章で歌い続けるジミー・スコット】

最終章。

結論から言えば、この日、ここにジミー・スコットのライヴを見に来れてものすごくよかった。この瞬間に立ち会えてよかった、という気持ちである。ジミー・スコットは、数年前、中野サンプラザで見た。その時と比べて、なんと弱々しくなったことか。ひじょうに複雑な気持ちが芽生えた。

ドラムス、ピアノ、ベース、サックス&フルート(同じ人)の4人編成にジミーが歌う。

現在79歳、今年80歳になるジミー翁は、すでに車椅子に乗ってステージ横まで移動、そこから杖が必要と思われるほどふらふらしながらステージ中央に進んだ。しばし、立ったまま歌っていたが、すぐに椅子に座る。しかし、歌声は枯れ、メロディーの音階もおぼつかない。歌っているというよりは、かろうじて、単語を発音しているといったほうがいい。こんなぎりぎりまで、彼は歌うのか、なぜ? まずそこに僕は痛々しさを感じた。もう充分歌った、ハッピーに引退してもいいのではないか。そんな風に思ってしまったのである。

彼のCDは、どれもすばらしい。しかし、彼のキャリアは不遇の連続だった。彼にスポットライトが当たるのは晩年になってからのこと。おそらく、今以上に声がでて歌声が素晴らしかった頃には、観客もまばらだっただろう。しかし、彼の声も枯れきっている今、会場は満員になり、多くの人がスタンディング・オヴェーションを送る。なんという皮肉だろうか。

それは、その瞬間のパフォーマンスへの拍手ではなく、彼の79年間の紆余曲折の人生すべてに対して送られているような気がしてならない。これまで、拍手をもらうべき時にはもらえず、しかし、その分を取り返すかのように、今万雷の拍手をもらう。

4曲歌って、1曲休み、あと最後の力を振り絞って2曲歌った。

なんともいえないが、途中から、彼のライヴ・パフォーマンスを見るのは、これが最期になるのではないかという気持ちになってきた。あの声の弱々しさ、あの体力のぎりぎりのところ。レイ・チャールズを2000年に見た時(死去4年前)でさえ、そこまでは感じなかった。あと、ジミー・スコットは何回ステージに立つのだろうか。

しかし、人生は最終的にはほぼプラス・マイナス・ゼロである。人生の初期にマイナス分があれば、後期にプラスが訪れる。ジミーの人生の後期は間違いなくプラスだ。

ライフ・オン・ザ・ロード、ライフ・オン・ザ・ステージ・・・。一旅芸人シンガー。ステージの上で旅立つことを目論んでいるのだろうか。

間違いなく、人生の最終章を歩んでいる彼の、貴重なライヴを共有できた、その点だけで、来た甲斐があった。また来年、来日するなら、足を運ぼう。

ブルーノート・ウェッブ
http://www.bluenote.co.jp/art/20050502.html

Setlist 2nd set

Show started 21:12

1. (Inst)(Band)
2. All Of Me
3. But Beautiful
4. I Got It Bad & That Ain’t Good
5. Pennies From Heaven
6. (Inst)(Band)(Octopus?)
7. Sometimes I Feel Like Motherless Child
8. I Cried For You

Show ended 22:30

(2005年5月3日火曜セカンド、東京ブルーノート=ジミー・スコット・ライヴ)

ENT>MUSIC>LIVE>Scott, Jimmy

ムード・インディゴ
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