ミッシェル・ンデゲオチェロ・ライヴ
『人を目覚めさせる鳥』
【2002年6月18日火曜・ファースト・ステージ・東京ブルー
ノート】
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覚醒(かくせい)。
はじけるダブル・ベースと、乾いたしかし、抜群のリズム感のあ
るドラムスによって打ち出される強烈なビートは、ぬるま湯の音楽
に浸り切った者を、完璧に覚醒させる。そして、ステージが続けば
続くほど、そのリズム隊の強烈さに、麻薬的な快感を覚えるように
なった。
スキンヘッドの女性ベース奏者、ミッシェル・ンデゲオチェロの
数年ぶりの来日ライヴ。前回ライヴは、内容はよかったものの、池
袋のホールでほとんど観客がいないという、状況的にはかなりお寒
いものだった。今回は、日本がトルコに負け、しかも、雨も降って
いるという悪条件ながら、そこそこの入りを見せた。
ある時は淡々とベースを弾き、歌を歌い言葉を語る。サウンドは
ファンクをベースにジャズと若干のR&Bが融合。ラップのような
語りがあるが、それはラップではなく、モノローグ、あるいは、ポ
エトリー・リーディングのような言葉に息吹を与える種類のものだ
った。
痛烈に感じられたのは、内省的で、自己完結型のアーティストだ
ということ。すべてを自分でやり、問題さえも自分で解決してしま
うという姿勢だ。それゆえか、彼女が、観客に話しかけることは、
非常にまれだ。それでも、一度だけ観客に向かって話しかけ、私た
ちには「カルチュアル・チャネリング(文化的伝播)」がお互い必
要だ、と語った。
エンタテイナーというものとは程遠く、自身の主張をもの静かに
、しかし、時に激烈な音楽とともに語る表現者、アーティストとし
ての佇まいをみせていた。ンデゲオチェロは、スワヒリ語で「鳥の
ように自由に」という意味。そして今、「人を目覚めさせる鳥」の
意味が加わった。
【2002年6月18日火曜・東京ブルーノート・ファースト・ス
テージ】
吉岡正晴(音楽評論家)
(毎日新聞2002年6月22日付け夕刊に掲載)
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